リストラ文化がビッグテックを生んだ

解雇が容易なアメリカでは、いまAIの導入によってテック業界や金融業界を中心に大規模な「AIリストラ」が進んでいます。2026年上半期(1〜5月)だけで8万7000人が「AIリストラ」で人員削減されました。

余剰人員を解雇することで、企業のコスト競争力が高まりますが、影響はそれだけではありません。解雇された従業員が他産業に移動することで、産業構造の転換が進みます。

経営者は、よく「環境変化に合わせて自己変革しなければならない」と言います。しかし、経営学の研究成果によると、企業の自己変革能力は実は大したことなく、一国の経済の付加価値は、既存企業の改革よりもスタートアップ企業からより多く生み出されます。

アメリカでは、1990年代前半にIBM・HPなど大手メーカーが経営危機に陥り、技術者を大量に解雇しました。その多くがシリコンバレーの新興企業に移り、その後のIT産業の発展に貢献しました。現在もGoogle(1998年創業)やFacebook(2004年創業)といった新興企業がアメリカ経済の中心です。

一方わが国では、トヨタ自動車(1937年創業)や三菱UFJフィナンシャルグループ(前身の三菱為換店は1880年創業)といった伝統的企業、いわゆるJTC(※)が時価総額の1位・2位を占めています。本格的なスタートアップ企業が少なく、産業構造の転換が進んでいないことは明らかです。

※JTC……ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー(Japanese Traditional Company)の略で、大手を中心とした伝統的な日本企業のこと

「解雇=NG」は労働者も経済も不幸にする

産業構造の転換が進まないことには、さまざまな理由があります。が、やはり事業を起こすのは「ヒト」。解雇が厳しく制限されているため、人材がJTCに滞留し、スタートアップ企業に移動しないことが大きいでしょう。

この状況を打破するには、解雇規制の緩和が必要です。経団連は、解雇の金銭救済制度(不当解雇と判断された場合に労働者が職場復帰の代わりに金銭補償を受け取る制度)の法制化を政府に要望していますが、さらに踏み込んで、整理解雇の4要件を思い切って緩和するべきです。

見出しに踊る「解雇」の文字
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というと、必ず「従業員の雇用が脅かされる」といった反対意見が出てきます。たしかに、社会的弱者が解雇されて職を失うのは大問題で、解雇規制を緩和するなら雇用や所得を保証する必要があります。しかし、一般的な労働者は、衰退するJTCで低賃金で働き続けるよりも、新興企業・成長企業に移って活躍するほうが良いでしょう。「解雇は絶対にまかりならん」という主張は、結果的に労働者本人にとっても日本経済にとってもプラスになりません。