日産が自信を取り戻す場に

このように今後、フォーミュラEから量産への多様な技術的フィードバックが期待されている。ただし、量産ではレースマシン開発と比べると生産コストの管理を含めてクリアしなければならない要素が多いことも付け加えておきたい。

そのため、開発目標が絞られているフォーミュラEで活用するモーターなどのハードウェアそのものを量産で展開することは難しい。それでも岩瀬さん曰く「基本的な設計手法としてはフォーミュラEと量産では変えていません」という。

日産の技術が、両者の間で地続きになっていることを岩瀬さんは実感しているのだ。

こうした肌感覚を通じて、岩瀬さんは「日産の技術は強い」とひと言で表現した。

別の視点からも岩瀬さんはフォーミュラEを捉えている。

岩瀬さんがフォーミュラEチームのメンバーとして欧州に赴任したのは2025年4月。この時期、日産はイヴァン・エスピノーサ社長体制へと移行し「Re:Nissan」に関するさまざまな情報が日産の社内外で広がった時期と重なる。

日産にとって厳しい経営環境にあるからこそ、岩瀬さんは「フォーミュラEを、日産が自信を取り戻す場にしたい」という強い気持ちを持って業務にあたっているというのだ。

自分たちのやっていることは間違っていない

一般的に、日産車は“乗ればその良さがわかる”と表現されることが多い。だからこそ、フォーミュラEを通じて、ユーザーが「日産にはこんな技術があるのか」「市販のEVやe-POWERとも関係が深いのか」といった事実に興味を持ってもらい、実際に日産の市販車に乗るきっかけにして欲しいという岩瀬さんの思いがある。

「あの時期、外から聞こえてくるのは明るくない情報ばかりだったのは事実です。私は中途で日産に入っているからこそ、乗り心地に徹底してこだわる日産の技術力の高さを客観的に感じていました。だからこそ、技術面で量産と近しいフォーミュラEで結果を出すことで、日産の仲間に自分たちのやっていることが『間違っていなかった』と感じてほしい思いもあります」

日産の真骨頂である“技術の日産”への再認識を促すことで、社内外で日産に対するポジティブなマインドを醸成するはず。「すでにポジティブな流れは生まれている」と岩瀬さんは見る。

実際、シーズン11(2024-2025年)でドライバーのオリバー・ローランドがシリーズチャンピオンを獲得し、年間優勝を果たした際、喝采を送った社員は少なくない。

昨シーズン(2024/25)では、オリバー ローランドがドライバーズランキングでシリーズチャンピオンを獲得した。
画像提供=日産自動車
昨シーズン(2024/25)では、オリバー ローランドがドライバーズランキングでシリーズチャンピオンを獲得した。