F1との決定的な違い
そもそも、F1とフォーミュラEは何が違うのか。
岩瀬さんは「目的が大きく違う」と言い切る。
F1は、純粋にレーシングカーとして世界の頂点を目指す舞台であるのに対して、フォーミュラEは「電動化技術を促進し、持続可能な社会の実現に貢献すること」を掲げているからだ。
国際自動車連盟(FIA)が統括するモータースポーツは、フォーミュラ1(F1)、ル・マン24時間を含む世界耐久選手権(WEC)、ラリージャパンを含む世界ラリー選手権(WRC)、そしてフォーミュラEがある。
このうちF1とフォーミュラEはドライバーが車体中央に座る単座席のオープンホイールマシン(フォーミュラカー)としては同じ思想になる。パワーユニットではF1がエンジンを含むハイブリッド機構を搭載するのに対して、フォーミュラEは電動モーターで駆動する。
岩瀬さんは「フォーミュラEは、活用できるエネルギーの制約が大きく、走行性能においてエネルギー効率が良いマシンをつくる必要があります」と指摘する。
フォーミュラEにおける日産の強み
フォーミュラEでは各チームによるレース戦略の違いが大きく、それゆえレース中のオーバーテイク(追い越し)の機会が多い。結果として、レースとしてのエンターテインメント性が高い。
F1でも今シーズンからパワートレインにおけるモーター出力の比率が上がり、オーバーテイクの場面が昨シーズンに比べて増えているが、フォーミュラEはF1よりもレース展開が大きく変わる場面が多い。
世界屈指の市街地レースのモナコを例にとるとわかりやすい。ここでは、F1とフォーミュラEがほぼ同じコースレイアウトを使用する。フォーミュラEでの決勝レース中のオーバーテイクの総回数はF1と、桁が違う。今シーズンは特にオーバーテイクが多く、200回を超えるテールトゥノーズの大接戦が観客を魅了した。
また、フォーミュラEは、F1よりもマシン規定での制約が大きく、シャシー(車体)、タイヤ、バッテリーなど多くの部分が各チームで共通だ。チーム間での主な違いは、ECU(エンジンやブレーキなど車両の各システムを電子制御する「車載用コンピューター」)のソフトウエア、モーターを中心とするパワートレイン、その搭載に伴うリアサスペンションのレイアウトになる。これらを各チームが独自に設計している。
その上で、レースの勝負どころはエネルギーの効率となる。量産型EVでいうところの電費に相当する。ここに、日産チームの強みがあるという。


