日本人の扱いは「まるで芸能人」
「今日からここで生活してくれ」
案内の兵士がそう言うと、同部屋の兵士たちの視線が一斉に集まった。仏頂面をしている者、興味なさそうな者、好奇心を隠そうとしない者、色んな目をした兵士がそこにはいた。
「わからないことがあれば、ここにいる仲間たちに聞いたらいいから」
案内人の兵士がそう言って立ち去った途端、数人の兵士たちが近寄ってきた。
「なぜロシアに?」という率直な疑問から、「日本に侍はまだいるのか?」という文化的な興味まで矢継ぎ早に質問が飛んできた。詰問ではなく、芸能人を見るかのような好奇心。全員が笑顔で次から次へと話しかけてくる。
「日本人の志願兵が来ると噂になっていたんだ。僕が生まれて初めて見る日本人だ!」
そう言って興奮している兵士もいた。予想外の反応に拍子抜けした。途中から喫煙が可能な基地の中庭に移動して、輪になって質問攻めにされた。
「日本のテクノロジーは最高だよね!」
「日本人はみんな家に道場があって、幼い頃から父親に武道を教わっているんだろ?」
「チョンマゲの人の割合はどれくらい? 普段から着物を着てる?」
「アニメ最高だよね!」
屈強な大男たちが、すごく嬉しそうだ。
「日本人は武道をしているから強い」という偏見
〈ロシア軍の兵士って、こんなにフレンドリーでミーハーなんやな……〉
心の中で呟きながら、彼らとの距離は一気に縮まった。身長170cm弱の僕よりも、兵士たちは皆、頭1つ分くらい大きいが、彼らが信じて疑わないことが一つあった。
「日本人は武道をしているから強い」
実際、誰一人、舐めた態度を取る奴や喧嘩腰の奴はいなかった。そしてもう一つ、利点になった経歴がある。あの忌まわしき奈良少年刑務所の過去だ。
プーチン政権は兵士不足を補うために多数の受刑者を軍に投入したと報じられているが、実際、マキイフカの基地にそんな「受刑者兵」はいた。彼らは普段、一般の兵士とは別の部屋におり、監視役もついていた。だが、道を踏み外した奴らと仲良くなるのは、僕にとっては普通のことだ。
「お前か、日本からやって来た兵士は!」
受刑者兵たちも日本人に興味があるようだ。悪さをしたエピソードを話すと、いつも大爆笑だった。
受刑者兵からいつの間にか「サムライ」と呼ばれるようになり、それがそのままコールサインになった。軍隊では本名を名乗らず、コールサインで互いを呼ぶ。

