「まずは君のスマホを見せてくれ」

話を戻そう。マキイフカの基地に到着した僕は、すぐにピャトナシュカ旅団の最高司令官が待つ個室へと通された。

「話は聞いているが、まずは君のスマホを見せてもらっていいか?」

最高司令官は開口一番、僕にそう告げた。

「はい、こちらです」

と言って差し出すと、こう続けた。

「iPhoneか。SiriとGoogleをログアウトしてくれないか。現在地もオフに」

ロシア軍ではiPhoneの使用は推奨されていない。情報漏洩の危険があるからだ。

「パスポートは持っているかい?」

最高司令官は僕からパスポートを受け取ると、隣のデスクに座る兵士にそれを渡した。専用の端末で読み取ると、情報がすべて画面に映し出されたようだ。

犯罪歴の有無を聞かれ、少年刑務所にいたことを正直に答えた。ピャトナシュカ旅団にはさまざまな経歴を持つ外国人兵士が多数在籍しているだけに、最高司令官に気にした様子はなかった。

「彼らもいろいろと聞きたいみたいだから、そのまま質問に答えてくれ」

しばらく質問を続けた後、最高司令官は周りにいた軍人らを見回した。視線が僕一人に注がれる。ここから取り調べに近い聴取が始まった。

「祖国にミサイルが降ってもいいのか」

「なぜロシアに来たのか?」
「ロシアで戦いたいからです」
「日本はアメリカの属国じゃないのか?」
「それが嫌でロシアに来たんです」
「君の祖国にミサイルの雨を降らせることになるかもしれないが、いいのか?」
「僕個人がどうこう言えることではないし、どうこうできることでもない」
「ロシア語ができずに、どうやって戦うのか?」
「すぐに覚えます」

次から次へと質問を投げかけられ、途中からは翻訳アプリの手を借りた。

「銃を撃ったことがあるのか?」
「東南アジアであらゆる銃を撃っていました」

スマホで撮影した僕の射撃動画を見せると、納得したのか、最高司令官がこう言った。

「まあいい。とりあえずテストをしよう。基地内の部屋で待機し、指示があるまで仲間にいろいろと聞きなさい」

歓迎ムードはほとんど感じられなかった。まさかこのまま拷問部屋へと通されるのではないだろうか。案内の兵士について薄暗い通路を歩いていると、そんな疑念もよぎった。

連れて行かれた場所は倉庫だった。扉を開けると衣類や備品などが山積みにされており、まっさらな戦闘服や靴、防弾ベストなどを受け取った。それらを持って今度は大部屋へ。何人もの兵士が生活する居室だ。

ミサイル
写真=iStock.com/vadimrysev
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