命がけの「ペットボトル排泄」
人間は必ず排泄する。それは戦地であっても同じだ。現代戦はドローンの赤外線カメラで四六時中、敵軍から監視されているため、気温の低い夏場の夜や冬に野外で排泄はできない。排泄物の温度で感知され、人間の存在が明らかになってしまうからだ。
ではどうやって用を足すのか。仲間たちがいるブリンダッシュのなかで排泄をしている。ペットボトル上部の細くなった部分をカットして、そこに肛門を密着させて大便をするのだ。
ちなみに、一緒に小便を出すのは御法度である。ブリンダッシュを汚してしまうからだ。大便だけを出した後、拭き取ったティッシュを便の上に載せてそこに小便をする。ティッシュは跳ね防止の役割も果たす。これが兵士の排泄行為のルールである。
ただ、悪臭を放つ排泄ボトルをブリンダッシュのなかには置いておけない。そこで、ボトルに穴を開けて紐を通し、鞄のストラップのような状態を作る。そのストラップを持って、排泄ボトルをブンブンと振り回すのだ。ふざけているのではない。野外に向かって遠投をするために、全力で振り回す。遠心力を上手く使わないと理想的なアーチを描けない。
なるべく遠くに飛ばす必要があるから、目一杯振り回す。この動作を誤ると、中の排泄物をブリンダッシュにブチまけ、仲間との対立を招く恐れすらある。非常に繊細な技術がいるのだ。
こうして僕らはドローンから逃れていた。
“死臭”に耐えられず新兵は必ず嘔吐する
前線ではブリンダッシュを造り、そこに兵士は仲間数人と身を隠す。戦地で戦うのは敵だけに限らない。
何週間もシャワーが浴びられず、汗と汚れで真っ黒になった軍服を基地に戻るまで着続けなければならない。僕は今ではどんな死体を見ようが何の感情も湧いてこないが、仲間の汗臭さと周囲に転がる死体の異臭で、新兵は決まって嘔吐する。
さらに、臭いは蚊と蠅を呼び寄せる。蚊と蠅の音で睡眠を邪魔されるだけでなく、見たこともない虫やネズミに噛まれて体中が痛痒くなる。ネズミ捕りのトリモチを仕掛けると、一度に20匹が引っかかったこともあった。
夏場だと食べ物はすぐに腐り、腐った食べ物にウジがわく。缶詰なら大丈夫だろうと思うかもしれないが、腐らない代わりに重くて持ち運びが困難だ。お湯を注ぐ食品は軽いが、お湯を沸かすには火がいる。前線では火の熱と光は敵に発見されやすく、命取りになる。
戦地では食料と水が頻繁に尽きる。いつも喉が渇き、いつも空腹だ。雨が降れば喉を潤せるが全身はずぶ濡れだ。着替えがないから乾くまで我慢するしかない。不快さに加え、朝と夜の冷えとも戦う。そして秋を飛び越していきなり冬になる。極端に気候が変わって、痛いほどの寒さだ。

