また長澤社長は、成功を「運でした」と笑い飛ばし、「社員のおかげ」と謙遜する。だから、社員はこの人のために頑張ろう、となるのではないか。
社員の挑戦を認める「やってみろし」の会社の文化も見逃せない。失敗しても、「まず挑戦してみては」。だから、社員も新しいことに手を挙げられる。この文化なくして、健康食材のもち麦、雑穀市場は生まれなかった。
“山梨のはくばく”であり続ける
はくばくは2000年から地元山梨のサッカーのJリーグチーム「ヴァンフォーレ甲府」の公式スポンサーとして、地域に密着した応援を繰り広げている。2022年の天皇杯「全日本サッカー選手権大会」を制したほか、J1にも何度か昇格した。サッカーW杯北中米大会で活躍した伊東純也は神奈川大学を卒業し、このクラブを経て、世界へ飛躍していった。
長澤社長は本拠の山梨を愛している。
「“東京のはくばく”より、“山梨のはくばく”が全然、いいと思うんですよね。はくばくがヴァンフォーレを支えているということで、山梨県民もはくばくに感謝してくれています。それは、社員にとって誇りというか、自信になっていると思います」
だから、と言って、苦笑いを浮かべた。
「簡単には(スポンサーを)やめられないなって」
夢は?
「やっぱり」と、今年還暦を迎えた長澤社長は言った。
「まずは日本の人が、もっと大麦や雑穀を食べて、健康的な食生活をしてほしいということです。そういう食文化をさらに日本から世界に広げていくのが夢ですね」
海外展開として、オーストラリアや米国、ベトナムなどに販売チャネルをひろげている。市場を拡大し、数値目標は5年後の2031年に年商300億円としている。
「市場創造っていうのが、うちにとってのミッションだと思っています。まだまだ(穀物市場は)小さい。大麦は米より安い。食費的にも健康的にも、食事に大麦、雑穀を取り入れたほうが絶対、いいんです」
経営者の原点となった父の言葉
ラグビー場半分ほどの東京本社のオフィスはフリーアドレスで、社員の活力に満ちている。雰囲気が明るいのだ。こちらが歩けば、若手社員があいさつしてくれる。社長室はなく、長澤社長は中央あたりのソファーに座って、前の小さいテーブルでパソコンを立ち上げていた。傍にはキャリーバッグ。
そういえば、長澤社長には忘れられない光景がある。小学4年の時か。家での夕食時、父が大声で言ったそうだ。〈社員が生き生きと踊るような会社をつくりたい〉と。
「おやじの言葉を聞いていて、“踊るってねえんじゃないか”って突っ込めなかったですけど、それが私の経営者の原点なんです。社長として意識していることは2つ。ひとつは、勝てる戦略というか、社員が頑張っただけちゃんとリターンもあって世の中にも役に立つといった勝ち筋を示すこと。もうひとつは、人こそすべて。社員が楽しくて、楽しくて、もう踊っちゃうような職場の雰囲気をつくることです」
穀物の感動的価値を創造するとことが会社の理念ならば、社員も健康で明るくたくましくなければなるまい。時には、みんなでダンスを。いずれ、そんな「最高の景色を」。



