決め手は「やってみろし」で、「ほぼほぼゴーサイン」

新商品を発売する時の判断基準はなんだろう。

「やってみろし」である。サントリーの企業理念のひとつ、「やってみなはれ」同様、「甲州弁で、ちょっと軽く、やってみたらという感じです」。長澤社長は、「基本的には全部、ゴーサイン出すんですよ」と言葉を足した。「だから、そういう点じゃ、失敗もいっぱいしています。その中のヒット商品かもしれません」

国産大麦を100%使用した『水出しでおいしい麦茶』は2006(平成18)年、若い女性社員の提案を採用して発売された。「ちがいのわかる贅沢な味」が女性の支持を集め、今ではヒット商品となっている。『ベビーそうめん』なる商品は2015(同27)年発売、食塩を使用せず、小麦粉だけで作っているので、離乳食に安心して利用できるそうだ。

はくばく「ベビーそうめん」「水出しでおいしい麦茶」
写真提供=はくばく
はくばく「ベビーそうめん」「水出しでおいしい麦茶」

「最初、周りの人は“それは売れるのか”という話になって、提案した女子社員が“絶対、売れます”と泣き出したんです。結局、泣くまでやりたいのなら、やってみたらということになりました」

「ラグビーも、会社も一緒」

長澤社長はラグビーで培った精神を、経営の根幹に据えている。ラグビーのコアバリューのひとつ、「インテグリティ(真摯さ・品位)」を大事にし、仲間のためにからだを張るタックル精神、そして「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」精神を尊ぶ。

ラグビーをやっていた頃の長澤社長
写真提供=はくばく
東大ラグビー部時代の長澤社長(左から3人目)

プロップは脚光を浴びにくいポジションながら、そういった選手がからだを張らないと試合には勝てない。会社も同じ。一人ひとりが役割を遂行しないと、会社は回らない。

「ラグビーって、15人でいろいろなポジションがあるじゃないですか。プロップはスタンドオフができないし、スタンドオフはプロップができません。15人、いろいろな役者がそろわないとできないんです。会社も一緒。それぞれが自分の持ち場で一番いい力を発揮してもらえればいいと思っています。例えば、“おいしい麦茶”の場合、彼女が麦茶のことを一番真剣に考えた結果、出した結論だったら、それはいいだろうなと思いました。確かに一回、チャレンジする価値はある。失敗しても、彼女にとっては、挑戦した経験にもなるし、会社にとってもプラスしかありません。商品戦略で私はノータッチです。最後のゴーサインだけで、ほぼほぼゴーですから」

社員を後押しする「やってみろし」

つまるところ、長澤社長は単なる商品開発ではなく、「儲かる仕組み」「売れ続ける仕組み」「新たな市場」をつくったのである。

経営学の父、ピーター・ドラッカー風にいえば、はくばくは「顧客を創造した」ことになる。健康や美容のため毎日の食事に「雑穀」や「もち麦」を取り入れる愛用者を増やしているのだ。雑穀、もち麦ブームは偶然ながら、売り上げが爆発的に伸びたのは、そこに「研究」「商品開発」「生産体制」「営業」「ブランド」があったからだろう。