静岡県とJR東海が決裂した瞬間
ただ金子社長との対談では、川勝知事の説明は非常にわかりにくかった。そのため、1時間以上もたってから、再度、川勝知事の囲み取材の場が設けられた。
そこで川勝知事は「県自然環境保全条例に基づいてヤード工事を認めない」と宣言、以前から主張していた通りに準備工事を否定してしまった。条例の解釈を拡大したのであり、静岡県のやり方はあまりにも強引過ぎた。
その強引な反対に対して、JR東海は「リニア2027年開業は困難。静岡工区の未着工が理由」と発表したのである。
トップ対談翌日の新聞紙面は1面トップなどで、「知事ヤード整備認めず、JRリニア延期表明へ 初のトップ会談物別れ」(中日新聞)、「リニア27年開業延期へ 静岡県知事、着工認めず『JR東海の環境対策不十分』」(読売新聞)、「リニア27年開業延期へ JR東海社長と静岡県知事 会談で平行線」(日経新聞)などと伝えた。
そもそも、3カ月程度の準備工事と2027年のリニア開業困難には何の因果関係もない。ふつうに考えれば、誰もがわかると考えていた。当然、JR東海の工事事務所関係者の多くは承知していた。
実際には、たった3カ月間の準備工事などやらせればいいのだ。それで2027年開業に間に合うというのならば、その「秘策」を見せてもらえばいい。いまとなってはJR東海の「秘策」が何かわからないが、川勝知事が自然環境保全条例を盾に準備工事を蹴ってしまったことの影響は大きかった。
トップ会談4日後の豪雨が追い打ち
そんな大騒ぎがあったせいか、JR東海が求めた準備工事は何ひとつできていない。東俣林道を使い、すべての資機材を南アルプスのリニア工事現場へ搬入するところから始まる。
皮肉なことに、金子社長が2020年6月26日に静岡県庁を訪問した4日後、再び、豪雨が東俣林道を襲い、前年の台風被害が残る中で、新たな路肩欠損や道路冠水、斜面崩壊などで林道は全面閉鎖に追い込まれた。
その後も台風や大雨、豪雨などで斜面崩壊、道路欠損など毎年のように起きている。2022年には8月の台風8号、9月の台風14号、15号が立て続けに襲い、大きな被害をもたらしている。
これからも東俣林道では、もぐら叩きのように道路損壊や落石、斜面崩壊などが次々と起こることが予想される。南アルプスの静岡工区工事現場がそのような過酷な自然環境の場所にあることを理解しなければならないのだ。
