川勝氏が遅らせた“犯人”に
川勝知事がJR東海と自然環境保全協定を結ばなかったことで、SNSを中心に「2027年開業を遅らせた“犯人”は川勝知事」となり、リニア開業を邪魔する「静岡悪者論」が広がるきっかけとなった。
つまり、自然環境保全協定を締結しなかったことが、リニア問題を巡る静岡県とJR東海との対立を最も象徴する出来事となったのだ。
それもあって、静岡県は、今回の自然環境保全協定の締結式を大々的に行うことで、リニア事業を推進する立場を鮮明にして、川勝知事時代の「反リニア」という世間の見方を一掃したかったのだろう。
いずれにしても、これだけでは非常にわかりにくい話である。実際に当時、いったい何があったのかをたどっていく。
JR東海は準備工事を理由に挙げたが…
トップ会談の1カ月前、2020年5月29日の定例会見で、金子社長は突然、「6月中に静岡工区の準備工事が再開できなければ、リニアの2027年の開業は難しい」と発言した。
この金子発言に対して、川勝知事は「リニアトンネルを掘るための工事なら本体工事の一環だ。2027年開業はJR東海の単なる企業目標に過ぎない」などと、頭から準備工事の再開を否定した。
金子社長が求めた「準備工事」とは、椹島、千石、西俣の3つのヤード(作業基地)にそれぞれ、切り土や盛り土を行い、坑口付近の樹木の伐採などをした上で、濁水処理設備、火薬設備、非常発電設備など資機材を搬入して、将来、リニアトンネル工事に着手できた場合に備えるというものだった。
もし、3つのヤード整備だけを求めたならば、それほど時間の掛かるものではない。JR東海は準備工事を3カ月程度と見込んでいた。
ふつうに考えれば、たった3カ月で終える準備工事だけ再開しても、2027年の開業に結びつくはずもない。
それも金子発言のたった1カ月前の4月27日に、リニア静岡工区の水資源問題を話し合う国の有識者会議が発足したばかりだった。有識者会議の結論が出ていない段階で、静岡県がトンネル本体工事を許可するはずはない。
それを考えれば、静岡工区のトンネル本体工事の着工にはどんなに早くても1年以上は掛かるのだ。

