社長から飛び出したあり得ない発言

この経営判断ミスが、現在の経営再建計画「Re:Nissan(リ・ニッサン)」につながっている。

近岡裕『日産 最後のサバイバルプラン』(日経BP)
近岡裕『日産 最後のサバイバルプラン』(日経BP)

日産自動車は2024年度の中間決算において、営業利益を前年同期と比べて9割も減らした。最大の理由は、米国市場における販売不振だ。新車不足で古いモデルの在庫が積み上がり、販売奨励金が増加。要は、在庫処分的に割引販売したために、利益が大幅に悪化したというわけだ。

これではブランド価値が毀損する一方だ。なぜ、こんなことになったのか。驚いたのは、この中間決算発表における内田氏の次の発言だ。

「去年の今ごろ(2023年11月ごろ)まで、我々はハイブリッド車がここまで急速に上がってくる状況というのを読めていなかった」

軽視の風土、根絶なるか
写真=共同通信社
下請け問題についての記者会見に臨む日産自動車の内田誠社長(右)=2024年5月31日午後、横浜市

米国市場は日産自動車にとって「生命線」だ。その極めて重要な市場において、新型車の投入計画を立てていないばかりか、トヨタ自動車やホンダのハイブリッド車の好調な販売状況を見ていなかったというのである。

実は、日産自動車はパワートレーンの技術戦略において的を外していなかった。

なぜハイブリッド車ブームを逃したのか

ハイブリッドシステム「e-POWER(イー・パワー)」を搭載したハイブリッド車とEVの両方を電動化戦略の柱に据えていたからだ。これにより、当面はハイブリッド車の開発に力を入れ、市場の動向を見ながら将来的にはEVの開発にシフトさせていくと、同社の技術担当役員がメディアに明らかにしていた。

確かに、経営リソースが限られるために「選択と集中」の必要があり、日産自動車はプラグインハイブリッド車とマイルドハイブリッド車は手掛けないという戦略を選んだ。それでも、ハイブリッド車を「現実解」と見るトヨタ自動車と方向性は合致していた。

【図表2】ハイブリッドシステム「e-POWER」

もちろん、エンジンの開発をやめるつもりもなかった。e-POWER向けに発電専用エンジンの効率向上を進める一方で、ガソリンエンジン車についても「顧客がいて、ビジネス(利益)になるなら続ける」(日産自動車)と語ってきたのだ。にもかかわらず、e-POWER搭載のハイブリッド車を米国市場に投入できず、販売機会を逸した。

【図表3】日産自動車の電動化戦略

他の自動車メーカーからは「日産自動車はマーケティングが悪い」という声も聞こえてくる。だが、現在の自動車メーカーの中で市場でのクルマの売れ行きを調べていない企業など考えられない。