求められる「個と論理の確立」とは何か
また、前記のような事態を避けるためには当然に押さえられているべき「近代的なものの見方・考え方や認識方法の基本」が押さえられていない場合がままあるのも、大きな問題である。
なぜなら、近代的思考の基本は、個の確立、論理の一貫性、事実認識の厳密さ、権力や制度の透明性といった「複雑な現代社会を適切に運営しかつ危機を回避するための最低限の前提条件の基盤」だからである。それが欠ければ、個人も集団も、空気や情動に流され、問題を構造的に把握できず、結果として、停滞や危機を避けることができない。
個人と集団の問題は、社会、制度、危機管理の問題につながっており、また、それらの背後には、論理や思想、リアリズムや近代的経験論の弱さという、より根の深い問題が控えているのだ。
こうした問題の全体を可視化し、認識し、変えてゆくように努めない限り、たとえば経済成長だけをターゲットにしてそれを実現しようとしても、氷山のうちの水面上に出ている部分だけをいじくり回すような結果に終わる可能性が高いだろう。経済関係に限らず、近年の日本の政策や制度改革の多くが失敗しているのは、このことが原因ではないかと思われるのである。


