東南アジアに拡散する詐欺グループ
グローバルサウス研究メディアの米チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクトは、取り締まりを受けてコンパウンドから姿を消した詐欺グループの大半はカンボジア国内のホテルやアパートに身を潜めており、一部はすでに国境を越え始めていると指摘する。
スリランカにはすでに1万〜2万人規模が流入しつつあり、マレーシアやベトナムへの移動も確認されている。取り締まりによって犯罪が根絶されるどころか、詐欺グループはかえって周辺国へと拡散しつつある。
2026年1月、中国国営テレビCCTVが一本の映像を放映した。手錠をかけられ、頭にフードを被せられた男が、治安部隊に両脇を固められて飛行機のタラップを降りてくる。陳容疑者だった。
中国公安部は陳容疑者を「大規模な越境オンラインギャンブル・詐欺犯罪組織の首謀者」と断じ、法に基づき強制的に身柄を拘束したと発表した。だが、一人の「黒幕」を捕まえたところで、カンボジアの詐欺産業を一掃することはもはやできない。
国際調査団体のヒューマニティ・リサーチ・コンサルタンシーが昨年5月に公表したレポートによると、カンボジアのサイバー犯罪が生み出す年間収益は、推定125億〜190億ドル(約2兆〜3兆円)。同国GDPの実に6割に相当する。
今日も20万人が詐欺拠点で働かされている
アムネスティは昨年6月の報告書で、カンボジア国内50カ所以上の詐欺コンパウンドにおいて奴隷化・人身売買・強制労働・拷問が横行していると指摘した。今年6月の調査報告書では、さらに33カ所を追加で挙げ、合計で86カ所の拠点を確認したと述べている。施設内に拘束され続けていた16カ国出身の73人が、この報告書に証言を寄せた。
CNNは国内に約300カ所の詐欺拠点が存在し、最大20万人が従事しているとの推計を伝えた。カンボジア経済の柱である縫製・繊維産業の雇用者数は、国連調べで約100万人。これに対し、詐欺に従事する人間の規模は、その5分の1に上る。
中国からカンボジアへ渡った詐欺界のカリスマにはついに手錠が掛かったが、一大産業となった詐欺行為はその後も鳴りを潜めることはない。
かつてまばゆいばかりのビーチで知られたシハヌークビルは近年、中国系企業の大量進出と一斉撤退を経て、ゴーストタウンの様相を呈しつつある。陳容疑者ら詐欺グループがもたらした治安の悪化は、これに輪をかけて、平和だったビーチタウンに拭えない汚点を残した。運営者はアジアへと広がっており、各地で治安の悪化が懸念される。


