生存者35人が語った「収容施設」の内側

起訴状によれば陳容疑者自身、殴打や拷問の写真を所持し、組織の意志に従わない労働者を殴れと部下に命じていた。一方、「殴り殺すな」とも念を押していたという。

2023年、プリンス・グループ傘下のカジノ企業「金貝集団有限公司(以下、金貝グループ)」が運営する閉鎖型施設で、中国国籍の男性イー・ミン・ダリさん(25)が殺害された。施設内部で、何が起きていたのか。命からがら脱出した生存者たちが、凄惨な実態を語っている。

金貝グループの表の顔は、高級ホテルやカジノだ。その裏では、カンボジア各地で恐喝や強制労働が横行する施設群を運営していた。アメリカ財務省は昨年10月、この男性の殺害事件と金貝グループの関連を示唆している。

国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、調査時点からさかのぼって6週間以内に施設から脱出または解放された35人の生存者から証言を集めた。それによると、施設管理者から性的暴行を受け、少なくとも2人の女性が妊娠していたことが判明。

このほか、指を切断された男性もいる。ある生存者は、脱走を試みた男性が管理者に喉を切られて殺される場面を目撃したと語った。

犯罪で得た金で日本の高級物件を買い漁る

強制労働で得た収益で、陳容疑者と共謀者らは世界各地の高級品を次々と手に入れた。

一味が犯罪の収益で高級腕時計やヨット、プライベートジェット、別荘を買いあさったと、米司法省は指摘する。ニューヨークで開かれたオークションでは、ピカソの絵画まで落札した。

陳容疑者は、被害者から盗んだ資金を元手に暗号資産のマイニングも手がけていた。大量のサーバーを稼働させ、暗号通貨を取得する事業だ。起訴状によれば、「コストがないから利益は莫大だ」と豪語していたという。正規の事業なら自己資金で設備を購入し電力を賄う必要があるが、詐欺で奪った金を充てていたため持ち出しはなかった。

陳容疑者らは、こうした資金を日本にも持ち込んでいた可能性がある。香港のサウスチャイナ・モーニングポストが配信した共同通信の報道によると、陳容疑者は2022年、東京・千代田区にプリンス・グループの日本法人を設立した。

東京
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自ら事業を興すことで、長期滞在の在留資格を得る狙いがあったとみられる。2024年にはプノンペンの本社付近から港区の高級マンションへ住所を移している。現地の関係者によれば、陳容疑者は頻繁に来日していたという。

日本に物件を持っていたのは陳容疑者だけではない。国際調査報道NPOのOCCRPと調査報道メディア「Tansa」によると、同グループ関連企業のある取締役は2019年、千葉県千葉市の高級住宅地の物件を購入した。別の取締役は2021年に港区青山の物件を、さらに別の取締役は昨年5月に渋谷の物件を、それぞれ購入している。グループの関係者たちは、次々と日本の不動産に手を伸ばしていた。