合理性と非合理性を掛け合わせる

ここで重要なことは、「パーク設計力」という合理的な構造と「細部へのこだわり」「察する力」という非合理的な人間力が、それぞれ単独では機能しないという点です。

ディズニーランドやユニバーサル・スタジオのパーク設計は、心理学・脳科学・動線設計などの科学的知見を駆使して、徹底的に合理的に計算されつくした結果です。

東京ディズニーで衣装を着た人が電車に乗る
写真=iStock.com/nedjelly
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しかし、どれほど完璧な設計でも、そこで働くスタッフの「察する力」や、夜間の徹底的な清掃という「狂気的なこだわり」が欠ければ、体験はすぐにコモディティー化します。合理的な計算は、なんとなく真似できるからです。

一方で、合理的な設計がなされていなければ、単なる“不便な施設”になりがちです。どれほどプロ意識の高いスタッフが集まっていても、数万人のゲスト全員に目が行き届くわけはありません。

スタッフの気づきは、あたりまえの親切にとどまってしまいます。非合理的な感動は、生まれません。

成功の鍵は、合理性と非合理性の掛け合わせにあるのです。

「沼る」に必要な3つの要素

それでは、沼るファンはどのように増えるのでしょうか? その疑問を解くために、「沼る」という現象を、「推し活」の心理メカニズムから考察してみましょう。

人が対象に熱狂し、応援したくなる心理には、つながり・自己効力感・自発性という3つの要素が不可欠だと言われています。これはスタンフォード大学オンラインハイスクール校長の星友啓氏が提唱する「心の3大欲求」です。

ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンをよく見れば、この3要素が巧みに設計されていることがわかります。

(1)つながり(Connection):孤独ではない、受け入れられているという感覚

「つながり」とは、単なる物理的な接触ではなく、「ここは私の居場所だ」「この人たちは私をわかってくれている」という心理的な絆です。

例えば、ディズニーランドの「バースデーシール」――誕生日だと伝えるともらえるシールです。これを貼って歩いていると、すれ違うキャスト全員から「おめでとう!」と声をかけられ、ときにはキャラクターやほかのゲストからも祝福されます。1人の客が「祝福される主役」に変わり、パークとの強いつながりを感じます。

このつながりを生み出す源泉が、「スタッフの微差への気づき」です。スタッフがゲストのわずかな差に気づいて特別扱いすることで、ゲストの心理的欲求が満たされるのです。