世界経済を守る「最大の防御壁」
ロンドン、ニューヨーク、東京。この3都市が、地球をほぼ三等分するように配置されていることは、世界経済にとって幸運な偶然でした。ロンドンを中心(経度0度)とし、西へ約5〜6時間の時差にニューヨーク、東へ約9時間の時差に東京。この3点がトライアングルを結ぶことで、24時間、常にどこかの巨大市場が開いている状態が作られています。
もし、日本がインドの位置にあったり、アメリカがハワイの位置にあったりすれば、市場には致命的な「空白時間」が生まれ、世界経済の決済システムはこれほどスムーズには機能しなかったでしょう。空白時間はリスクとなります。市場が開いていない間に起きた事件に対して、投資家はヘッジ(回避)する手段を持たないからです。
1997年のアジア通貨危機では、ヘッジファンドはこの「地理的な隙間(アジアが閉まり、ロンドンが開くまでの薄い時間帯)」を狙って集中砲火を浴びせました。3大市場のリレーは、単なる取引の場ではなく、世界経済をリスクから守るための地理的なセーフティネットでもあるのです。
現代ではアルゴリズム取引が普及し、ミリ秒単位で価格差が狙われています。しかし、どれほどテクノロジーが進化しても、主要プレイヤーが活動を停止する「夜」という物理的な空白は消せません。
3大市場が経度ごとに分散し、常に地球のどこかで取引が行われているという地理的陣形は、デジタル時代の今なお、システムを崩壊から守る最大の防御壁として機能しているのです。


