西海岸のロサンゼルスではダメな理由
それは「大西洋」を挟んでロンドンと向かい合っていたからに他なりません。
金融市場の規模は、参加者の多さで決まります。ニューヨーク市場がオープンする午前中は、ロンドン市場の午後と重なります。この「重複時間」があるからこそ、ニューヨークは欧州からの巨額の投資マネーを受け入れられます。
もし、金融首都が西海岸のロサンゼルスにあったとしたら、ロンドンとの時差は8時間になります。ロサンゼルスが開く頃にはロンドンは閉まっており、世界のマネーパイプは細くなってしまいます。
また、物理的なインフラの問題もあります。大西洋の海底には、ロンドンとニューヨークを結ぶ無数の光ファイバーケーブルが走っています。このケーブルこそが、米欧の金融市場をミリ秒単位で同期させる神経網です。
「1日の終わりの価格(終値)」を決める場所として、ニューヨークは、地理的に欧州とリンクでき、かつ1日の終わりを告げる東海岸でなければならなかったのです。
世界の投資家が「日本時間9時」を注目
最後に、東京市場です。シンガポールや香港の台頭により、東京の地位低下が叫ばれていますが、地政学的な視点で見れば、東京には他のアジア都市には真似できない決定的な役割があります。それは、「世界で最初に開く、本格的な巨大市場」という役割です。
日付変更線の関係上、オセアニア市場(ウェリントンやシドニー)が最も早く開きますが、参加者が少なく流動性が低いため、世界の機関投資家は「様子見」をします。真の意味で世界の市場が動き出すのは、巨大な実需を持つ日本勢が参入してくる「東京オープン(日本時間9時)」からです。
東京には、シンガポールにはない圧倒的な強みがあります。それは「実需の厚み」です。日本はGDP世界4位の経済大国であり、トヨタやソニーといった巨大な輸出入企業を抱えています。「1ドルいくらになろうが、今日中に部品代をドルで払わなければならない」といった、投機ではない切実な実弾(実需)が、毎日必ず発生します。これが市場の底板となり、安定性を生んでいます。
ニューヨーク市場が閉じた後の「空白」を埋め、新しい1日のトレンドをセットする。このアンカーおよび第一走者としての地理的役割は、どれほど経済が停滞しようとも、東京から失われることはありません。

