勉強しておけば、本をたくさん読んでおけば……悔いの輪廻は巡り続けるのか?
堅い本を読まない学生を嘆いてみせるのは、自分を棚に上げた親世代の身勝手だが、実際、今のキャンパスではどんな本が売れているのか。村上春樹の新作や東野圭吾らの映像化された著作、コミック、ライトノベル等々、大人が“嘆く”ためのネタは随所に転がっていそう。が、売り上げがマスメディアの露出に比例するかといえば、それも疑問だ。
東京六大学(慶応・東京・法政・明治・立教・早稲田)の各キャンパスの書店における書籍の売り上げランキングを、関係各所からご提供いただいた。就活・資格試験関連や英語教材を除くと、意外にバラつきがある。
「偏差値の高い上位校の学生ほど読書をし、本がよく売れる」
とは書店大手・丸善のキャンパスサービス統括部。立大のほか筑波大・上智大にも店舗を持つ同社の実感だろう。
歴史と伝統ある六大学の間でも、1強・2弱・3圏外という“偏差値格差”の存在は否定しがたいが、それは購入する本にまで反映されるのだろうか。『知の逆転』が2位、6位以下にも『教養の力』(集英社)、『学力幻想』(筑摩書房)といったタイトルが並ぶ東大は“らしさ”全開だ。
「『知』『思考』『起業』といったキーワードのある書籍に関心があり、若手のOB・OGの著作にも興味は持っている。洋書やユーズドの利用も多い。業界研究本の動きがいいほか、司法試験・公務員試験関連はコンスタントに売れている」(東大生協・本郷書籍部)
その東大の名がタイトルにある書(3位『現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』、6位『東大生が書いた問題を解く力を鍛えるケース問題ノート』(ともに東洋経済新報社)が、「新刊ではないが、異常に売れている」のは慶大生協の三田書籍部だ。過去に1、2年生と付属高中心の日吉キャンパスの売り上げ上位がコミックばかりだと揶揄された慶大だが、3、4年生の三田に移ると真面目モードに切り替わるらしい。7位の『世界史』(上・下、中公文庫)が2年近く売れ続け、新訳『知の考古学』(河出文庫)が10位という手堅さだ。ランク1位で、明大・東大でも上位の『憲法ガール』は、装丁の地味な小説形式。著者は慶大OBだ。一方、「授業はパソコン。教科書少ない、ノート取らない。つかみどころがない」と同書籍部がボヤく藤沢キャンパスに今回突っ込む暇がなかったのが心残りだ。