将棋の本が愛読されていた
ファーストクラスというエリアは、想像される以上に、特別な空間といえます。ハイクラスの方々が一堂に集まるのはもちろん、仕事モードから離れた機内は、お客様にとってある意味プライベートに近い空間。担当するCAは、一流の方々の、普段見ることのない一面を拝見する機会が多いのです。
私が長年ファーストクラス担当の客室乗務員として勤務した中で特に印象的だったのが、ファーストクラスを利用される常連の方々は、共通して「読書家である」こと。1度の搭乗の際に、多い方では10冊以上の文庫や新書を持ち込まれ、機内での時間のほとんどを読書に費やす方もいらっしゃいました。そんな姿を目にすればするほど、超一流のビジネスエリートでもある彼らがどんなジャンルの本を好むのか、私自身とても興味が湧いたものです。
読んでいる本の内容によっては、「何か悩みがあるのでは」と感じることもありました。本は読み手の“心の状態”を表すことがあるのです。
ファーストクラスのお客様は、機内ではビジネス書よりも歴史や文学、考え方のヒントとなるような本を好むことがわかりました。さらに興味深かったのが、「将棋」の本を愛読されている方が多かったこと。この傾向は、現在のファーストクラスのお客様にも共通しているようです。
ご存じのように「将棋」は相手の王将の捕獲をめざす、盤上の「静かなる闘争」。相手の出方を読むという意味では、将棋は経営者の方々に親和しており、人気が高いのかもしれません。
歴史小説では、やはり司馬遼太郎さんは手堅く、ほとんどの方が読まれていました。