アメリカだけが格差拡大
じつはピケティも、中間層の台頭が経済格差を縮小させ、社会を平等化させたことを認めています。だとしたらどこで意見が分かれるかというと、1980年を境に格差縮小の流れが変わり、とりわけアメリカでは明らかに格差拡大へと反転しているからです。
ところがこれについてもヴァルデンストロムは、地価の上昇で中間層の富が拡大したことで、近年でも欧米諸国全体で見れば資産格差は拡大していないと反論しています。
実際、ヨーロッパ諸国のトップ1%の富のシェアを1980年代はじめと2010年代末で比較すると、イギリスでは18%から16%へと富裕層のシェアは縮小しています。
それ以外の国でも、フランスは17%から18%へ、ドイツは26%から27%へと増えただけで、一般に思われているような「とめどない格差拡大」が起きているのはアメリカだけなのです。
ヴァルデンストロムは、「アメリカという特殊な事例に引きずられて、“平等化”という大きな流れを見失っている」と論じたのです。
日本は4世帯に1世帯が「金融資産ゼロ」
では、日本の状況はどうなのでしょうか。残念ながら、日本ではヴァルデンストロムが行なったような富(資産)の詳細な分布調査はないようですが、総務省が行なっている「全国家計構造調査(2019)」でおおよその傾向がわかります。
それによると、一人あたりに換算した資産のジニ係数は金融資産残高で0.664、不動産資産額で0.643で、予想どおり所得の不平等よりも資産の不平等のほうがはるかに大きくなっています。
とはいえ、マイホーム(不動産資産)があれば「ゆたか」ともいえません。金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査(2025)」では、持ち家世帯と非持ち家世帯に分けて、どの程度の金融資産を保有しているかを調査しています。
それによると、持ち家でありながらまったく金融資産をもっていない世帯が14.5%、およそ7世帯に1世帯あり、金融資産200万円未満の世帯まで含めれば、およそ4世帯に1世帯になります。

