物価上昇に追いつかない年金

「ペンショナー(年金生活者)」と言えば、欧米では「悠々自適」の代名詞のように思われているが、日本は年金だけで豊かな老後生活が送れるのだろうか。

窓の外を眺める高齢男性
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6月の年金支給から、支給額が1.9%引き上げられた。物価上昇に対応する措置というわけだが、一方で、2025年度の消費者物価指数は前年度比で2.7%も上昇している。年金はそれにまったく追いついておらず、実質的には0.8%減ったことになる。つまり、年金で生活する人たちの暮らしは、どんどん厳しくなっているのが現状だ。

「100年安心」。政府が2004年に年金制度を改正した際に導入したキャッチフレーズだ。だがこれは、「100歳まで安心して生活できる」という意味ではない。少子化が進んでも年金制度は破綻せず、100年間は持続するようになったという意味だった。

改革では「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みを導入し、現役世代の減少や平均寿命の延びに応じて、年金の給付水準を自動的に調整するようになった。少子化の影響などが考慮されるので、物価が上昇しても年金額はそれ以下に抑えられるようになったのだ。今回、支給額の引き上げ率が物価上昇に追いつかなかったのはこの制度改革のためだ。

制度は破綻しないが、生活は成り立たない

2025年に生まれた子供の数は67万人あまり。10年連続で過去最少を更新した。今の小学校4年生くらいまでは毎年100万人以上生まれていたので、驚くばかりの減少だ。少子化は政府の想定を大幅に上回るスピードで進んでいる。多くの国民、とくに若者世代が年金制度は破綻するのではないかと懸念するのも無理はないが、それでも年金制度自体は破綻しない。マクロ経済スライドのお陰というわけだ。

だが、逆に言えば、物価が大幅に上昇したとしても、年金額はそれに見合った分は決して上昇しないということだ。つまり、年金制度は破綻しないが、老後の生活は年金だけでは賄えず破綻する可能性が出てくる。

では、日本の年金額は国際的に見て多いのか少ないのか。物価の違いや為替レートの問題もあって簡単には比較できないが、「所得代替率」という指数を使って見ることが多い。所得代替率は現役世代の賃金水準と比較した年金額の割合である。