筋肉が落ちる原因のもっとも重要なこと
内藤教授は、そのまま食べられる蒸し豆や煮豆のパックを活用し、それらをサラダに振りかける、味噌汁に入れる、カレーで肉の代わりに入れるなどを勧める。
私はその説明を聞きながら、元気な長寿を目指すなら「たんぱく源に豆類を含めることがポイントなのか」と感心していた。しかし、続いて次の言葉に仰天してしまう。
「京丹後長寿コホート研究ではまだ発表していませんが、筋肉が落ちる原因のもっとも重要なことはたんぱく質摂取が足りないことよりも、砂糖の摂取です」
内藤教授によれば、砂糖の摂取量が多ければ多いほどサルコペニアになるリスクが上がる、というのだ。
「これは京丹後地域だけでなく、世界的な報告からも“砂糖が筋肉を減らしている”というのは間違いありません」
ここでいう砂糖とは、炭水化物に含まれる糖質や、果物の果糖を指しているのではない。ジュースや菓子類、加工食品に含まれる「添加糖」である。主食(炭水化物)や果物には糖質とともに食物繊維など他の成分が含まれているため吸収がゆるやか。ところが添加糖を含む食品の中でも、特に「飲み物」にしてしまうと、糖が過剰になる上に吸収もされやすい。
管理栄養士の望月理恵子氏がある論文「日常的に砂糖入りの飲料を飲む頻度が高い人ほど、筋肉量が不釣り合いに減少している」(https://www.mdpi.com/2072-6643/14/22/4917)を紹介しつつ、こう話す。
「近年、世界中で砂糖入り飲料の消費量が増えています。これは特に青少年への影響を調べたものですが、男女ともに砂糖入り飲料の摂取頻度が高いほど筋肉量指数が低く、筋肉量減少と関連していることが明らかにされています」
なぜ筋肉を減らすのか
なぜ砂糖が筋肉を減らすのか。メカニズムは大きく二つある。
ひとつは「糖化」だという。望月氏が続ける。
「砂糖の摂りすぎは体内のたんぱく質と糖が結合してしまい、たんぱく質の正常な働きが損なわれて、進行すると老化物質AGEが発生します」
つまりこういうことだ。
飲食で摂りすぎて血中に余ったブドウ糖(糖質)が、体の重要な構成因子であるたんぱく質にくっつき、たんぱく質が劣化してしまう。これを糖化反応といい、このとき老化を促進するAGEという悪玉物質ができる。
糖化が初期の段階であればたんぱく質は元の形に戻ることができるが、糖化が長期間続くとたんぱく質は劣化、変性し、AGEとなって元の正常な形のたんぱく質に戻れなくなってしまう。
AGEは筋肉だけでなく、肌のたるみや血管の硬化など全身の老化やさまざまな機能障害に関わることが知られている。砂糖が、筋肉の元になるたんぱく質そのものを劣化させてしまうということだ。
もうひとつの砂糖が筋肉を減らす理由は、「インスリン抵抗性と炎症」だ。糖分を多く摂取すると、筋肉に炎症が生じて血糖値を下げるインスリン(ホルモン)が過剰に分泌され、やがて筋肉の細胞がインスリンに反応しにくくなる。これをインスリン抵抗性という。
「インスリンには血糖を下げるだけでなく、アミノ酸(たんぱく質)を筋肉に送り込む重要な役割もあります。この働きが衰えると筋肉が合成されにくくなるのです」(望月氏)

