米国のスペースXが6月12日に上場し、企業価値は約2兆2000億ドルに達した。戦略コンサルタントの伊藤隆太さんは「中国は月の裏側へ着陸という世界初の実績や、宇宙ステーションの運用などを積み上げてきた。だが、宇宙開発の本質を読み違え、民間1社のスペースXに惨敗したと言える」という――。
2021年6月16日、中国北西部の甘粛省にある酒泉衛星発射センターで、「神舟12号」を搭載した「長征2F」ロケットの打ち上げ前日、車両が習近平中国国家主席の肖像が描かれた横断幕の前を通り過ぎている
イーロン・マスクに敗北した「中国の宇宙開発」
6月12日(米国時間11日)、米国の宇宙企業であるスペースX(SpaceX)がナスダック(Nasdaq)に上場した。ロイターの記事によれば、同社は過去最大の新規株式公開(IPO)で750億ドルを調達し、公開価格ベースの企業価値は1兆7700億ドル、上場初日の取引中には2兆2500億ドル超に達した。1ドル160円台なら約360兆円級である。
一方で、中国は国家の総力を宇宙へ注ぎ、月・火星探査を積み上げてきた。2019年には「嫦娥4号」を世界で初めて月の裏側に着陸させ、2022年には中国独自の宇宙ステーション「天宮」を本格運用させている。
国旗を掲げ、世界に到達点を示す力では、間違いなく大国だった。ところが2025年、スペースXはファルコン9(Falcon 9)だけで165回の軌道打ち上げを行い、中国全体の年間打ち上げ回数を大きく上回った。再使用ロケットでは中国の本格試験が回収に失敗し、スターリンク(Starlink)は米証券取引委員会(SEC)資料で中国とロシアを市場推計から外している。
国家を挙げた宇宙開発が、なぜ一民間企業に経済安全保障の要衝を先取りされたのか。中国は国旗の届く先を間違いなく広げている。だが、スペースXは、船舶も航空機も軍も企業も災害現場も依存する通信・輸送の網を広げた。その差が、習近平政権の宇宙構想に重い影を落としている。

