投資家が買ったのは「火星の夢」ではない

スペースXの上場と聞くと、つい株式市場の熱狂に目を奪われる。だが本当に注視すべきは、この上場が宇宙の勢力図をどう塗り替えるかだ。

台湾海峡、南シナ海、ウクライナ型の戦場、巨大災害が起きた瞬間、衛星通信は便利なサービスから戦略物資へ変わる。経済安全保障の焦点は、有事に誰の衛星、誰の通信、誰の打ち上げ能力に頼るかにある。

6月12日に配信されたロイターの記事は、スペースXの市場価値が上場初日に2兆ドルを超えたと伝えた。投資家が買った対象は、火星移住の物語を超えている。低軌道通信、再使用ロケット、軍事データ輸送、衛星製造を束ねる企業が、米国と同盟国の産業基盤に入り込むという期待である。