かつては「特別な日」に行く場所だった

現状を確認する前に、恵比寿ガーデンプレイスの開業した際の様子を振り返りたい。

開業日は、1994年10月8日。当時の顔ぶれは豪華だ。施設の中心に据えられたシャトーレストランは、フランスの名店「タイユバン」と「ジョエル・ロブション」の名を冠し、“世界初の夢のフランス料理店”とまで呼ばれた。予約は一年先まで取れないとも言われた店だ。

核テナントには百貨店の恵比寿三越。さらに、もとは工場の横で電気機関車と旧型客車を改装した車内で営業していたビヤレストランが、赤れんがづくりの大型ビヤホール「ビヤステーション恵比寿」として生まれ変わった。ウェスティンホテル東京、東京都写真美術館、映画館もそろう。

日曜の午後、センター広場。ベンチには犬を連れた人や子ども連れの家族の姿が目立つ
筆者撮影
日曜の午後、センター広場。ベンチには犬を連れた人や子ども連れの家族の姿が目立つ

食事をして、買い物をして、映画を見て、泊まる。その全部が一カ所で完結する。恵比寿ガーデンプレイスは、日常のなかに「特別な一日」を用意する場所だった。

その象徴が、時計広場である。2005年のドラマ『花より男子』のロケ地として、ここで待ち合わせること自体が平成のデートの記号になった。開業から2023年までの累計来街者数は、推定で約3億6600万人にのぼる。

百貨店の次に入った“意外なテナント”

では、恵比寿ガーデンプレイスはこの30年間でどう変わったのか。まずは主要な施設やテナントの変化を確認しよう。

まず、核テナントの恵比寿三越は、2021年2月28日に閉店している。その跡地は商業棟「センタープラザ」として刷新され、2022年4月に食品フロア「フーディーズガーデン」が先行開業、同年11月に全フロアがグランドオープンした。

そこに入ったのは、スーパーマーケットの「ライフ」、1885年創業の老舗「明治屋恵比寿ストアー」、ドラッグストアの「トモズ」、そしてホームセンター大手DCMが初めて手がける都市型の新業態「DCM DIY place」だ。百貨店があった場所は、食品スーパーと生活用品の売り場に、まるごと置き換わった。

名物の「ビヤステーション恵比寿」も、2021年12月30日に契約満了で閉店し、36年の歴史に幕を下ろした。跡地に2022年12月、ジャズで知られるブルーノートが新業態「ブルーノートプレイス」を開いた。200席を超える店だが、大人数の宴会をさばく大箱のビヤホールとは性格が違う。席料を払い、ライブ演奏とともに食事を楽しむ、体験と客単価を重視する業態だ。

センター広場の入り口。こちらも家族連れや犬連れが目立つ
筆者撮影
センター広場の入り口。こちらも家族連れや犬連れが目立つ

残ったのは、高級レストランだけだった。2004年に「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」へとリニューアルし、いまもミシュランの三つ星を保ち続けている。

並べてみれば、変化は明快だ。百貨店を捨ててスーパーに、大型ビヤホールを捨てて体験型ダイニングに切り替え、三つ星フレンチだけは磨き直した。