イルミネーションのときだけ「聖地」になる
ただし、1年のうちで、恵比寿ガーデンプレイスがかつての顔を取り戻す時期がある。冬のイルミネーションだ。
開業した1994年の冬から、その演出は話題になっていた。当時のツリーはポインセチアの花でつくられたもので、その年の『東京ウォーカー』のクリスマスイルミネーション特集では、恵比寿ガーデンプレイスがトップに据えられ、ページの半分以上を割いて紹介された。
1999年からはバカラとのコラボレーションが始まり、センター広場には大きなバカラのシャンデリアが飾られるようになる。以来、雑誌のクリスマス特集で恵比寿ガーデンプレイスは毎年のように取り上げられ続けている。
この季節だけを切り取れば、恵比寿ガーデンプレイスは今も「おしゃれなデートの聖地」に見える。冬の夜にはカップルや観光客が増え、SNSにはシャンデリアを背景にした写真が並ぶ。冒頭で多くの人が思い浮かべた、あの華やかな風景は、いまもこの時期に更新され続けている。
だが、それは1年のうちのごく一部にすぎない。残りの季節に施設を支えているのは、スーパーで買い物をする人、子どもを連れた家族、犬の散歩途中に立ち寄る近隣住民たちだ。冬のイルミネーションは、この施設が「別の顔」を持つようになったことを、見えにくくしている要因のひとつなのである。
恵比寿住民に愛される施設になっていた
冒頭の問いに戻ろう。恵比寿ガーデンプレイスに陰りが出てきたのではないか。そう思って歩いてみると、現地で見えたのは、自分の予想とは違う風景だった。
「平成のデートスポット」としての賑わいは、たしかに陰っていた。三つ星フレンチを除けば、休日の主役はもはやデート客や観光客ではなく、近隣住民である。
だが、施設そのものは、陰っていなかった。むしろ業績は上がっていた。サッポロホールディングスの不動産事業は、2024年12月期に事業利益率31.9%、グループ事業利益の26%を稼ぎ出していた。
「平成の一等地」は、広域から人を引き付けるデートスポットであることをやめ、周辺住民に愛される普段使いのショッピングセンターへ、自ら姿を変えていた。
「広域から人を呼ぶ目的地」であることをやめる、というはっきりした方針の下で、百貨店をスーパーに、大型ビヤホールを体験型ダイニングにあえて性格の異なる業態に切り替えた。残したのは、業態として磨き続けられる三つ星フレンチだけだった。

