「言ったもん負け」沈黙の職場

日本の職場には、「言ったもん負け」の文化が根強く残っています。会議で発言すると、必要以上に色んな指摘が飛んでくる。問題を指摘した人が、その問題解決係にされる。結果として、何も言わないほうが得だと感じ、たとえ思いついたことがあっても沈黙を選ぶようになります。これは「不幸せ因子」のひとつ、「自己抑圧」因子を高める最大の原因です。

沈黙が広がった職場では、表面的には「問題がない」ように見えても、実際には多くの問題が水面下でくすぶり続けます。みんなが問題を知っているのに、誰も言わないから放置される。そしてある日、取り返しのつかない事態になって初めて表面化する。そんな体験をされた方もいるのではないでしょうか。

「心理的安全性」という言葉が少し前から注目されるようになりました。チームの中で自分の意見を安心して言える状態のことです。心理的安全性が高いチームは業績も高い、というのはGoogleの調査でも確認されています。

しかし、日本の職場で心理的安全性を確保するのは容易ではありません。上下関係が強く従業員同士の同調圧力が強い文化の中で、部下が上司に率直な意見を言うには相当な勇気が要ります。「空気を読む」ことが美徳とされる環境で、率直な発言は疎まれたり、白い目を向けられたりすることがあります。

会議中のビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
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“安全性”のある「ぶつかり合い」とは

心理的安全性について、私の個人的な体験をお話しさせてください。

私は中学生のとき、父親とよく激しい議論をしていました。ある日、社会科の授業で共産主義について学びました。その先生はかなり左寄りの思想を持っている人で、それに感化され共感した私はそれを家で話しました。すると保守系の政党を支持していた父は激怒し、「先生のことを訴えるぞ」と言い出し、それはもう大喧嘩になりました。それでも、翌朝には普通に朝ご飯を一緒に食べていました。

親子喧嘩にしては少々激しいものだったかもしれませんが、今振り返ると、あれは「心理的安全性の中での本気のぶつかり合い」でした。父との間には、何を言っても関係が壊れないという信頼がありました。だからこそ、本音でぶつかれたのでしょう。今となっては、僕の考えを全身で受け止めてくれた亡き父の愛に感謝しかありません。

職場でも同じことが言えます。