日本には様々な業態の「寿司屋」がある

今、「寿司業界」と一言で語ることは、実はかなり難しくなっています。回転寿司と町寿司、高級寿司とスーパーの寿司売り場では、価格も客層も競争相手もまったく異なります。

同じ「寿司」を扱っていながら、置かれている環境は別の産業と言っていいほど違うのです。現在の寿司業界を理解するには、まずこの前提に立つ必要があります。

そもそも、かつての寿司業界は、ここまで細かく分かれてはいませんでした。日常の食事としての寿司も、出前の寿司も、持ち帰りの寿司も、祝い事の寿司も、ほぼすべてを町の寿司店が担っていました。

寿司店とは、地域の中で寿司に関する需要を一手に引き受ける「総合寿司業」だったのです。寿司が食べたいと思えば、とりあえず町の寿司店に行けばよかった時代です。

しかし、時代が進むにつれて、その役割は少しずつ切り分けられていきます。

まず、出前や宅配の分野には、宅配ピザをはじめとする他業界のノウハウが流入しました。洗に回転寿司では、牛丼チェーンなど大衆外食産業の効率的なオペレーションも持ち込まれ、大量集客型の寿司業態が成立します。

持ち帰り寿司についても、鮮魚店が寿司を売り始めたところよく売れたことをきっかけに、スーパーの寿司売り場が急速に存在感を高めていきました。寿司は、必ずしも寿司店でなければ提供できないものではなくなったのです。

パックに入った寿司の詰め合わせ
写真=iStock.com/keiichihiki
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コロナで伸びた寿司屋、打撃を受けた寿司屋

こうした分化が起きた理由の1つは、寿司という料理の提供できる価値の幅が、極めて広いことにあります。寿司は、日常食にもなれば、ごちそうにもなる。短時間で食べられる一方で、数時間かけて味わう高級料理にもなる。

価格帯も数百円から数万円まで対応でき、健康志向、エンターテインメント、贈答、とりあえずお腹を満たすなど、様々な切り口で商品化が可能です。この「切り取りやすさ」こそが、業態分化を促した大きな要因でしょう。

もう1つの理由は、寿司が「求められて、しかも儲かる」商材だったことです。需要が明確で、価格設計の自由度も高い。こうした条件が揃っていたからこそ、寿司業界は他業界から見ても魅力的な参入先となりました。

分化は寿司業界の弱体化ではなく、むしろ寿司という食のポテンシャルが高かったからこそ起きた現象だと言えます。

コロナ禍は、この分化構造をはっきりと浮かび上がらせました。町寿司や高級寿司が大きな打撃を受ける一方で、持ち帰り寿司、デリバリー寿司には追い風となりました。