ノルウェーサーモンが日本の食卓を変えた
一方で、「もう1つの主役」になったサーモンは、マグロとは異なるルートをたどりました。
元々日本では、サケを生で食べる文化はありませんでした。寄生虫の問題があり、焼くか煮るかが一般的な調理法だったのです。それを変えたのが、いわゆるノルウェーサーモンです。
冷凍、養殖技術の発展により、寄生虫リスクを除去した安全な生食用サーモンが登場し、寿司ネタとしても売り込まれた結果、「サーモン=寿司の定番」となったのです。
また。サーモンの人気を支えたのは、その安定供給と扱いやすさです。養殖により通年で品質が一定し、脂がのって柔らかく、冷凍・解凍しても品質が保てる。加工もしやすくて身もまとまって取れるため、売る側にとっても都合の良い魚です。
おさらいになりますが、マグロとサーモンには共通点も多くあります。いずれも冷凍、養殖によって安定供給が可能で、脂がのって味が濃く、現代人の嗜好に合っています。
こうした“現代的な魚”の条件を満たしていることが、2大人気ネタとしての地位を支えているといえるでしょう。
見た目の美しさが人気を押し上げる
そして、もう1つ忘れてはならないのが「見た目の力」です。寿司は本来、視覚的にも美しい料理であり、白いシャリに赤やオレンジのネタがのると、美しく見えます。マグロとサーモンは、まさにその色彩バランスを体現しています。
東京で発信されたその視覚的イメージが、メディアや全国の寿司店の実店舗でも広がり、定番の地位を築き上げました。
こうしてマグロとサーモンは、技術、流通、情報、そして見た目のすべてを味方につけ、寿司ネタの2大巨頭に上り詰めました。もはやこの2つは、単なる人気ネタではなく、寿司ビジネスを支える基盤そのものといえます。
とはいえ、プリやカンパチ、タイなど新たなスター候補も続々と登場しています。多様化する寿司市場の中で、マグロとサーモンがどのように進化していくか――それもまた、これからの寿司ビジネスの見どころなのです。

