「実質賃金」がまたマイナスに陥る懸念

日本では、ガソリンや電気・ガスの補助金が出ているので今のところ物価上昇は抑えられていますが、補助金のない米国では1、2月にそれぞれ2.4%だった消費者物価の上昇率は3月に3.3%、4月には3.8%に跳ね上がりました。欧州でも物価が上昇しています。日本でも、エネルギー関連に補助金が出ていても、その他の商品・サービスも上がりやすい状況で、物価上昇が始まるでしょう。

そうすれば、やっとプラスになった「実質賃金」がまたマイナスに陥る懸念があります。「実質賃金」は、額面の賃金(名目賃金)からインフレ率を引いたものです。春に賃上げのあった会社も多いと思いますが、昨年並みのところも多く、3%以上の物価上昇となれば、実質賃金は再度マイナスに沈む懸念があります。

さらには、円安に対抗しなければなりません。円安は輸入物価の上昇を通じて日本経済に悪影響を与えます。政府は介入により160円を少し下回るラインを必死で守っていますが、金利を上げない限り根本的な対策にはなりません。欧米もインフレ懸念から金利上昇のリスクがあり、そうなれば日米などの金利差は縮まらないので円安が続きます。

この点でも政策金利を上げることが必要で、6月15、16日の日銀の政策決定会合では、高い確率で政策金利を0.25%上げ、1.0%になるでしょう。

さらには、黒田前日銀総裁が、短期金利について1.5%という言及をしており、そのことと関連しなくとも、私は年内に日銀は1.25%まで政策金利を上昇させると考えています。

そうなれば、住宅ローンの変動金利も一段と上昇するのは必至となります。

長期金利が上がれば住宅ローン固定金利も

1年超の金利を長期金利と言いますが、こちらも上昇をまぬかれません。こちらは固定金利型の住宅ローンに影響を及ぼします。

【図表1】新発10年国債利回り

図表1は長期金利の代名詞である「10年国債利回り」の昨年初からの動きです。昨年初には1.2%程度だったのが、高市政権になり急上昇。最近では2.6%を超えました。

これは、高市政権の積極財政に対し、投資家が財政悪化を懸念して国債を売り、それにより、長期金利が上昇したものです。さらには、イラン情勢により、ガソリン価格を170円程度に抑えることや、電気・ガス料金への補助などを延長せざるを得ないとのことから、2.5%を超える程度まで上昇したのです。

日本は、対名目GDP比で先進国中ダントツ最悪という財政状況で、財政悪化懸念への市場の反応が大きく、今後も補助金などだけではなく、医療費・年金などの社会保障、公共工事などのインフラ整備、米国に歩調を合わせる形での防衛費など、財政拡大が続けば高い確率で長期金利はさらに上がると考えられます。

つまり、固定金利型の住宅ローンはほぼ確実に上がります。