東京を中心に不動産価格が高止まりしている。住宅コンサルタントの寺岡孝さんは「この高騰は1980年代のバブルとは構造的に異なり、価格が大きく下がることは期待できない。そのため、マイホームの購入を待っても有利にはならないだろう」という――。
東京都心の風景
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下がるタイミングを待っていても無駄

「ここまで高いなら、いずれ下がるはずだ」

住宅購入を検討しながら、高止まりする価格を前に立ち止まる人は少なくないでしょう。

東京都では中古マンションの平均価格が1億円、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)でも7000万円を超え、「バブル」という言葉が飛び交います。

しかし、現実はより冷徹です。価格は下がるどころか、構造的な要因によって高値圏で硬直化しています。

いま市場で起きているのは、単なる価格の乱高下ではありません。

これは、「価格が下がらないまま、購入できる層だけが急速に淘汰されている」という、市場による過酷な選別であるといえるでしょう。購入を先送りにするほど、あなたの相対的な立場は弱体化していく――これが、今の住宅市場の本質です。

「待つべきか、今買うべきか」という問いは、もはや意味をなさない時代です。重要なのは「市場がいつ下がるか」ではなく、「あなた自身が、今の価格帯で資産を維持し続ける耐久力を持っているか」です。

本稿では、独立系住宅コンサルタントの視点から、この構造の本質を解き明かし、購入判断に必要な思考軸を提示します。

「令和のバブル崩壊」が起きない理由

多くの人が今回の価格上昇を「バブル」と呼び、調整局面を期待します。確かに、2010年代後半から続く都市部のマンション価格上昇は、一見バブルのように映ります。

しかし、1980年代のバブルと決定的に異なる点があります。当時の価格上昇は投機マネーの流入が主因でしたが、今回はコスト構造の変化という「実需的な要因」が根底にあります。

① 供給側は「値下げ」ではなく「供給絞り」を選ぶ

デベロッパーにとって、今や「安く作って数で稼ぐ」モデルは完全に崩壊しました。都市部の用地取得は競争激化で困難を極め、資材費・人件費は2020年以降、驚異的なペースで高騰し続けています。建設現場の人手不足は深刻で、特定技能制度の拡充でも追いつかない状況が続いています。

デベロッパーにとって価格を下げることは、ブランド価値と収益性を同時に毀損する自殺行為。売れ行きが鈍れば、彼らは価格を下げるのではなく「供給を絞る」という戦略をとります。実際、首都圏の新築マンション供給戸数は、ピーク時の半分以下まで落ち込んでおり、これが、市場で価格が下がらない最大の構造的理由といえます。