認識のギャップは両国関係の「しこり」

日本の教科書で、領土問題に関する相手国の主張を列挙した上でそれを批判させるワークを用意したものはほとんどないでしょう。日本の教科書では、通常は日本政府の見解が記述されるだけです。

この「探求活動」は、生徒に批判的思考を促すという点では評価できます。相手の主張を知り、それに対して自分なりの反論を考えることは、重要な学習活動です。

しかし同時に、この活動は「日本の主張は間違っている」という前提に立っていて、「日本の主張にも一理あるかもしれない」という可能性は、最初から排除されているともいえるのです。

こうした教育を受けてきた人が、「領土問題」を日本とは全く違う形で認識することになるのは当然と言えます。日本人は「韓国が竹島を不法占拠している」と学び、韓国人は「日本が独島を紛争地域化しようとしている」と学ぶのです。

この認識のギャップは、両国関係における重要な「しこり」となっています。

ソウルの日本大使館前で、竹島を自国領とする日本の主張に抗議する人たち
写真=共同通信社
ソウルの日本大使館前で、竹島を自国領とする日本の主張に抗議する人たち(=2015年2月23日)

「慰安婦問題」では日本が完全な悪者に

もうひとつ、日本と韓国の間に残る問題が、「慰安婦」と賠償をめぐる問題です。そもそも「慰安婦」そのものに対する認識について一定の議論がある上に、そこへの賠償については、未だに訴訟が提起されるほどの根深さがあります。

『韓国史』は、「日本の戦争責任問題は未解決の問題だ」という立場を取っています。そして「慰安婦」等の動員について、次のように続けます。

強制動員された周辺国の人々は、日本政府を相手に強制動員の事実の認定と被害補償を求めている。これに対し国際連合人権委員会などは日本政府が責任ある措置を取るように勧告した。
しかし日本政府は強制動員の問題について政府責任を否定し、周辺国との間に摩擦を生じさせている。

ここでは、日本政府が責任を否定していることだけを取り上げ、そこに至る経緯などは書かれていません。これだけ見れば、日本がただ身勝手であるような印象すら受けうるでしょう。

日本の占領行為のひどさがあれほど詳細に紹介されていたこととは、ある意味で対照的といえます。占領政策については2ページを使って詳細に記述されているのに対し、戦後賠償問題については数行の記述に留まっています。