変わらぬ村上ファンドの出口戦略
両者は水面下で交渉し、翌年2月、1株3839円、総額2350億円の自社株買いに村上ファンドが応じ、持ち株を売却するとともに不動産事業スピンオフ提案取り下げに合意、この一件は「落着」します。
この発表を受けて株価は3400円に下がりました。フジの不動産やコンテンツ制作の価値が株価に反映していない点に着目して経営陣を揺さぶる、という村上ファンドの手法は、大阪の不動産含み益や阪神タイガースの価値に着目して阪神電鉄の株式を大量取得した20年前から相変わらず、の感を否めません。
村上ファンドはこの取引で推定400億〜500億円儲けた計算になりますが、奇しくもその金額まで20年前と同じでした。そのカネはどこからでてきたのでしょう? 阪神電鉄のケースでは村上ファンド持ち株の買い主は阪急でしたから、阪急の株主が出し手だということになり、阪急株主は怒りの矛先を村上ファンドではなく阪急経営陣に向けるしかない、と説明しました。
株主を無視した身勝手な決断
今回の場合、自社株買いですから買い手はフジMHD自身、そのカネの出し手はフジMHDの既存株主です。しかもこのケースでは儲けたのもフジMHD株主である村上ファンド、同じ会社の株主の間で富が移転したことになります。
つまり、昔からフジを支えてきた株主の富が横から突然入ってきた強面ファンドに流れる、という理不尽なことを会社経営陣・取締役会が率先してやったことになります。
もちろんこれは、自社株買いの株価が高すぎた場合ですが、他の株主が入ってきにくい立ち会い外買付(ToSTNeT)取引の形をとり、取引後に株価が下がったという意味で、株主平等原則に反する行為だという疑念はぬぐえません。
標的企業の株式を買い集め高値で買い取らせる行為は米国で「グリーンメール」と呼ばれますが、これは1980年代に廃れた手法で、米国なら他の株主が損害賠償請求の株主代表訴訟を起こすことでしょう。この一件は、日本では相変わらず、一般投資家の利益保護の視点に欠けた会社対応がまかり通ることを露呈しました。

