業界の自主規制には限界がある

スポットワーク業界において、すでに自主規制は存在する。2022年2月に発足したスポットワーク協会は、現在正会員13社などで構成され、業界の健全な市場成長に向けた「スポットワーク雇用仲介事業ガイドライン」を策定・公表している。

さらに厚生労働省は2025年7月、スポットワーク協会に対し「スポットワークにおける適切な労務管理」に関する協力を依頼し、労働者・使用者向けリーフレットを公表した(注3)

タイミーは、上記のスポットワーク協会や厚生労働省との対話を踏まえ、2025年9月1日よりサービス運営方針を変更。企業側キャンセルを「原則不可」とし、勤務開始24時間前を過ぎたキャンセルには休業手当の支払い義務を発生させる制度に改めた。

報道によれば、この自主規制は形式的には動いていたが、過去分の救済を設計しなかった点が問題となっているようだ。本件については、法的な補償の線引きおよび企業の社会的責任の双方から論じられるべきであろう。

注3:厚生労働省「いわゆる「スポットワーク」の留意事項等

“タイミードタキャン”の次に起こること

現在の課題を放置した場合、何が起きるのか。まず懸念されるのは、直前キャンセルのたびに紛争や訴訟が繰り返され、ワーカー側が「企業側が直前キャンセルを行うかもしれない」と考えて利用を控えるようになることである。その結果、誠実なワーカーや企業ほどスポットワークから離れ、市場全体の質と規模が縮小していくおそれがある。

バツ印の札を持つ人
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

今回の事案に関し、プラットフォーマーにとって大手利用企業の存在感が大きすぎるのであれば、行政や第三者機関などによる仲裁や救済が有効かもしれない。悪質な企業の公表も考えられるであろう。

一方で、参加する企業が安心してプラットフォームに参加できるよう、労働者の質保証の観点から、過去の利用歴や資格保有、研修受講などを踏まえて、プラットフォーマーがワーカーに“一定の認定”を与える方法も有効と考えられる。タイミーにおいても、評価や実績に応じた選別や限定募集の仕組みはすでにみられる(注4)

「メンバーのプラットフォーム参加に際して、一定の認証を課す」といった仕組みは、世の中のさまざまなプラットフォームですでにみられ、こうした管理や選別は、プラットフォーム研究において「キュレーション」と言われる。

当然、病気やケガといったやむを得ない事情もあるため、厳格なペナルティを課すことには倫理的な問題はある。しかし「遅刻や欠勤・キャンセル率が高い」「応募条件を明らかに満たしていない」「勤務態度が悪い」といったワーカーと、誠実なワーカーとを見分ける方法は、用意するべきかもしれない。

注4:タイミー公式サイト「タイミーが選ばれる理由」部分