スポットワークにおけるワーカー側の責任
今回はワーカー側の提訴であるが、ワーカー側にも当然責任や義務はある。
多くのワーカーは、スポットワーク市場において、日々誠実に働いていると考えられるが、ワーカー側の遅刻・欠勤や条件確認不足によるミスマッチ、あるいは一部の自己利益を最優先する行動が重なると、市場全体の信頼が損なわれる。その結果、誠実な参加者ほど不利益を受けやすくなる点には注意が必要だ。
つまり、規律を欠くワーカーによって、誠実に働くワーカーが割を食い、プラットフォーム市場全体が劣化する――経済学でいう「レモン市場」の罠が発生することになる。
このため、ワーカー側も自己責任でミスマッチを防ぐこと、業務の条件をよく確認すること、依頼に誠実であることが重要となる。
加えて、ワーカーは基本的に対企業の交渉において弱い立場にある。自身が持つ働き手としての権利や、何らかの問題が起きた時にどのように対処したらよいかは、リスク管理の視点から事前に知っておくべきであろう。
問われる「プラットフォーマーの責任」
訴訟を起こされたタイミーの視点からも考えてみよう。タイミーが行うプラットフォームビジネスは、企業とワーカーの双方が納得して参加できることで、市場として成り立ち、発展していく仕組みである。
プラットフォームを成り立たせるには、企業が安心して募集でき、ワーカーも安心して応募できることが前提となる。企業にとっては必要な人材が確実に確保できること、ワーカーにとっては約束した条件で働けることが重要である。
そのためには、利用企業が必要なタイミングでワーカーを募集する際に、登録するワーカーが責任をもって期待された業務を果たすことが求められる。それが十分に担保されなければ、企業がプラットフォームを活用する動機は弱まりかねない。企業は、工場や店舗の人員を確保するうえで、ワーカーの技術や能力だけでなく、勤務態度なども重視するのが通常だからだ。
その上で、今回のように突然のキャンセルが起き、かつ補償がなされなければ、ワーカー側の「時間の確保損」であり、場合によっては生活に支障が生じる。特に、生活の基盤として様々な業務を掛け持ちするワーカーにとっては、「たかだか数千円だから」「次の仕事もあるでしょ」では済まされない問題である。
プラットフォーマーは、場の設営者として、この両者の思惑を理解し、お互いが求める要求内容を交通整理し、必要なギャップを埋める必要がある。

