実際はもっと長く寝ている可能性

不眠型だと自身の睡眠時間を過小に評価し、安眠型だと過大に評価する傾向にあるのだ。ある研究では被験者の34%でアクティグラフィーでの測定結果と自身の推定する睡眠時間に1時間以上の乖離があった。

また、被験者はアクティグラフィーで表示された時間よりも平均23分長く眠ったと考えていた。

これはどういうことだろう? アクティグラフィーによる睡眠時間は主観的な睡眠時間より、信頼性の高い睡眠ポリグラフ検査で測定された睡眠時間に近いことが研究からわかっている。

安眠型の人が6時間眠ったと思ったとしても、実際の睡眠はもう少し短かった可能性があるのだ。不眠型では6時間眠ったと思ったとしても、実際はもっと長く眠っていたかもしれず、これも不眠症の人にとっては安心材料になるかもしれない。

不眠症などで睡眠の断片化が著しいと、夜の睡眠で得られる休息感がずっと少なくなる可能性があるという現象とおそらく関連している。

不眠症だと脳は中断されずに30分以上眠らないと睡眠を認識しないようだが、不眠症治療では主観的な睡眠時間と主観的な睡眠効率を特に重視する。それが最終的には本人が知覚する睡眠の質を示すもので、治療において改善の拠り所となる最も重要な指標の一つだからだ。

不眠症は実は睡眠の問題ではない

研究対象となったハヅァ族の平均睡眠効率は70%未満であるが、にもかかわらず、睡眠の問題が報告されていないという特異性がある。これまで見てきたように、理由の一つは、産業社会での夜の睡眠の状態が悪いということではなく、私たちが中途覚醒の時間をハヅァ族の人々より否定的にとらえているからだろう。

これまで診てきた患者は夜を辛いもの、眠れないものと心配しながら過ごす人が多かった。ハヅァ族のように夜一緒に眠る誰かに何度か起こされ、覚醒したままゆるゆると横たわり、その後また寝入ってしまう状態より、ずっと多くのストレスと疲労を生むと想像できる。

したがって、不眠症は睡眠の問題というより不安な覚醒の問題だと考えられる。ふと目覚めても、寛いで横になっていられるのなら睡眠問題が生じる可能性は低い。不眠を分析する質問は「なぜ眠れないのか?」ではなく「なぜ目覚めているのか?」、さらには「目覚めている間、何をしているか?」とすべきなのだ。

夜ベッドで目を覚ます女性
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充分な睡眠をとるべきだというプレッシャーや不自然なほどの「スーパー睡眠」の追求が、産業社会を悩ませているように見える。近年の睡眠薬の大量消費ぶりにも見てとれる。しかし、それでは自然な睡眠から遠ざかるばかりだろう。

本稿ではこの点をさらに詳しく述べ、夜中の覚醒時間を減らし、睡眠時間を増やす最も強力な方法を記したい。