職場の窓から見えた重機に“一目惚れ”
「重機にまったく興味がなかった」という東さんが重機好きになったのは、些細なきっかけからだった。
「まだ結婚生活が続いているころに、長女が生まれたタイミングで『私もパートに出たほうがいいかも』と思って、タクシー会社で事務所の清掃の仕事を始めました。配偶者控除を受けられるくらいのちょっとした収入があればよかったので、清掃のパートでは月収5万円ほど、年収にすると60万円くらいの収入がありました。当時、その会社の向かいは何もない野原だったんですが、あるときから重機が入るようになって地面を派手に掘り始めたんですよ。その姿を見て、『え、重機めっちゃかっこいいじゃん』って」
まさに重機に“一目ぼれ”した東さん。その後は、暇さえあれば事務所の2階の窓から重機を眺めるようになった。
「『私も重機に乗れるようになりたいなぁ』って思いながら、ずっと見ていました」
日に日に募る「自分も重機に乗りたい」という思い。しかし、これまで重機とは縁遠い世界で生きてきたため、どうすれば重機に乗れるようになるかはわからない。
そんなもどかしい日々を過ごしていたある日、東さんは再び運命の出会いを体験する。
「たまたま近くのコンビニに行ったら、いつも重機に乗っていた運転手のおじさんがいたんですよ。勇気を出して私から声をかけてみたら、『あ、いつも俺のこと見てる子だよね?』って言ってくれたんです。『見てるのはユンボの方です』ってすぐに訂正しましたけど(笑)」
勘違いされていた東さんだったが、そのときに「どうすれば重機に乗れるのか」など、気になっていたことを思う存分聞いた。すると、「そんなに重機に乗りたいなら資格取ってきたら乗せてやるよ」と言われた。
その瞬間に、東さんの決意は固まった。
資格を取得し、晴れて“重機女子”に
資格取得を決意した東さんは、苦労の末、約半年後に資格を取得。青い作業服を着ていたことと、体型がドラえもんに似ていたことから、のちに「ドラえもん先輩」と呼ぶことになる重機オペレーターの方に再び連絡を取り、その方と同じ会社で働くことになった。
その会社での私の仕事は、工事現場などで出た残土を置く“置き場”の管理でした。置き場での作業は「ユンボ操縦の基礎」とも言われており、一見すると単純な作業に思える。しかし、残土を整形したり、土の中に含まれている石や枝などの不純物を取り除いたりすることで製品化するため、その工程は多岐にわたる。
また、いかに基礎と言っても、重機を扱うのが初めての東さんにとっては慣れないことばかり。雨で流れないように土を盛ったり、最小限の動きで作業をしたりと、ユンボの基礎を一から覚えていった。
「最初の頃は『全然ダメ』『降りろ!』ってよく怒られていましたね(笑)。でも、『ユンボに乗れるようになりたい』っていう気持ちは変わらなかったので、とにかく必死に食らいついていました。そのころは技術もなかったので、日給は8000円。年収にすると200万円程度でした」


