ドトールのこだわりは「豆」
「趣味のよい」とされるスターバックスに対して、便利でコスパがいいのが、現在、日本でスターバックスに次いで店舗数の多いドトールコーヒーです(2026年3月現在、約1080店)。街中でよく見かけるリーズナブルなカフェチェーンですが、実はその1杯のコーヒーの中には、驚くほどのこだわりとドラマが詰まっています。
ドトールが大切にしているのは、コーヒーのおいしさを左右する3つの要素。それが、豆・焙煎・抽出です。
まず、豆へのこだわりを見てみましょう。ドトールは、世界20カ国以上からコーヒー豆を仕入れています。その方法は普通ではありません。現地の商社任せにしないことはもちろんのこと、自社のスタッフが自分の目と舌で確かめ、ときには実際に現地に足を運んで、農園や品種、果ては木の一本一本まで指定して買い付けることもあります。
「ブラジル産」のようなざっくりした買い方はせず、ピンポイントで「この地域の、この農園の、この木の豆を」というレベルで選びます。これを、こだわりのコーヒー専門店でなく、東証プライム上場企業の全国チェーンがやっているというのは、およそ、信じがたいことなのです。
1杯150円のコーヒーを2300円の器に注ぐ
輸送への気遣いも尋常ではありません。赤道直下の高温地域で育った豆を日本まで運ぶ間に劣化させないため、船の一番下の温度が安定した場所に積み、到着後も定温倉庫で管理しています。
さらに、ドトールは千葉と兵庫に自社工場を持ち、全国の店舗からの注文に応じて、その日焙煎したての豆を届けています。つまり、いつでも新鮮な状態でお店に届けているのです。さらに、コーヒーを淹れる機械も自社開発しています。ドリップの紙には、極薄の和紙を使うというこだわりぶりです。
ここまで徹底して「味」をつくり込んでいるからこそ、ドトールのコーヒーは値段以上のクオリティを保っています。1962年の創業当初、ドトールのコーヒーは1杯150円という格安価格でした。にもかかわらず、カップは1客2300円もする高級ボーンチャイナ、スプーンは1本1700円のものを使用していました。
フードにも妥協をせず、たとえばジャーマンドッグのソーセージには天然の羊腸を使い、パンは専用工場で製造し、ミルクレープは職人が手作業で仕上げていました。この強烈な「こだわり」は、創業者・鳥羽博道の理念の表れでした。

