部長が扱うのは「具体」より「抽象」

あるいは課長時代の業務推進では、メンバーからの相談に乗ったり、月次の業績の確認をしたりしてきたかもしれません。でも部長になったなら、今月の数字よりも次の3年の利益を考えることが求められます。一人ひとりに即効性のあるアドバイスをするのではなく、市場や顧客セグメントの優先順位を整理し、集中してリソースを投下すべき箇所を決定するのが部長です。利益を増やす体制を作るためには、人材育成や採用が必要になることもあるので、そうした横断的な視野を持ち、組織に変化を起こしていく役割を担うことになります。

組織の直接的な実務を担う「現場」を重視し、そこで得られる情報や判断を尊重するのは大切なことで、その意味での「現場主義」を無理に変える必要はありません。しかし、メンバーも課長も部長も、全員が同じ視点で同じ対策を議論していては、組織の進化が遅れてしまいます。現場で起こっていることを軸にしながら、メンバー・課長・部長がそれぞれ違う役割を果たすことが重要です。

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とくに課長から部長になるときには、「現場の具体的な事象に、一つひとつ対策を立てる」というポジションから、「事象を抽象化し、根本的な原因を捉えて汎用的な対策を立てる」というポジションに変わります。これまでは現場にいち早く向かい、スピーディーな対策を行うことで認められてきたのですから、同じ行動で解決したくなるかもしれません。その欲求をぐっと抑えて、部長として、これまでとは違う解決法を探る――これがアンラーニングです。スピード感を重視する代わりに、物事を構造的に捉える力、俯瞰的に整理する力や、目指す結果から逆算してプロセスを設計する力など、戦略策定や業務推進に関わる新たなスキルも、磨いていかなければなりません。

誤解される「リスキリング」

林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)
林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)

アンラーニングとともに重要なのが、正しい意味での「リスキリング」です。本来は、配置転換があったときに行き先の部署で必要なスキルを習得したり、世相を受けて変化する業務に対応するため、DXなどの新たな知識を獲得したりすることを指すものです。ポイントは、社員の職業能力向上・再開発を目的に、会社側が実施するものであるということです。会社が示す新しい組織の形やポジションに対して、必要なスキルを社員が習得。これを行った社員のキャリアを会社が保証していくのが、リスキリングのあるべき姿なのです。

しかし世間では、個人が自主性に基づいて自由に取り組むものだというような、表面的な理解が広がってしまっています。「会社が将来を保証してくれない時代だから、個人で副業でも稼げるようにならないといけない」とか、あるいは定年後に備えて「趣味を活かして何かできるようになっておこう」と考える人も多いようです。

でも、本当のリスキリングが社内で適切に行われていれば、ポータブルスキルやマネジメントスキルなどもおのずと鍛えられ、「大課長」の量産も避けられたはずです。

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