管理職の仕事が時代とともに変化

ここで、冒頭の「部長ならできます」のエピソードを思い出してください。20年前までは普通だったこの言葉の裏には、それまでの恵まれた社会情勢があります。1990年代初頭の日本にはまだ、1960年代からの好景気の名残がありました。

林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)
林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)

15歳から64歳の生産年齢人口比率が、従属人口(14歳以下と65歳以上の人口合計)に対して高い「人口ボーナス期」が続いており、社会構造自体が経済成長を支えていました。既存の事業を繰り返して磨き込んでいれば、新しいことを始めなくても、企業の業績が伸びていく時代でもありました。そのため管理職は部長に昇進してもなお、目の前の業務を管理・監督していれば、それでよかったのです。また、就職というよりも終身雇用制度を踏まえた「就社」という考え方が強かったため、現代のように転職も当たり前ではなく、社員のコンディションに今ほど気を遣う必要がありませんでした。愛社精神に支えられ、社員のエンゲージメントを高める必要性が低かった時代でもあります。

もはや既存事業だけでは衰退する

しかし、少子高齢化が進む今では、そうはいきません。生産年齢人口比率は1995年をピークに減少し始め、かつては7割近かった数字が、2024年には50%台後半まで下がりました。このように従属人口割合が高い構造を「人口オーナス」といい、社会保障費などの負担が増えることから、経済成長が妨げられるとされています。

【図表2】日本の生産年齢(15~64歳)人口の推移と将来推計
出典=『上司はリスクばかりを指摘する』

また、社会が移り変わるスピードも上がっています。事業変化のサイクルも速くなっており、企業活動の転換が常に求められるようになりました。これまでの事業を大切に磨き続けているだけでは、企業は成長できないばかりか、衰退していく時代になっているのです。そのため、新しい顧客層の開拓や新しい事業開発などが求められるようになっただけでなく、終身雇用・年功序列が弱まる中で、転職という選択肢も一般化しました。これらの変化によって、エンゲージメントやチームビルディングなど多くの取り組みが求められるようになってきました。

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