それでも感じた「学歴の壁」

周囲とは異なるキャリアを持ちつつも、職場で地道に信頼を勝ち取っていった田中さん。ですが、学歴より実力が重要に見える世界であっても、学歴やキャリアによって顧客が限定されることに悩んでいたそうです。東大や早慶出身の同僚は、同じ大学出身の富裕層を顧客にしているのに自分はそうした繋がりがない。ここにきて「学歴の壁」を感じたそうです。

私自身もこの田中さんの言葉を十分に理解できます。私は大阪産業大学や龍谷大学にいた頃、大人に自分の学歴について正直に話すと、初対面の人の反応が微妙に変わる瞬間を何度も経験しました。就職活動でも苦戦しました。エントリーシートの段階で学歴フィルターに弾かれ、面接にすら進めないことが何度もありました。

しかし、9浪の末に早稲田大学に入学してからは、明らかに世界が変わりました。9浪のハンデがあっても、多くの人は「苦労したけど、早稲田に入れたんだ」と肯定的な反応を示していただける感覚がありました。出版の仕事をいただけるようになったのも、テレビ出演の依頼が来るようになったのも、正直なところ「早稲田」という看板があったからです。もし私が早稲田に入れなければ、これらの機会は得られなかったでしょう。

田中さんが直面した同窓ネットワークの壁は、信頼の担保や共通言語に加えて、まさに学歴が持つ見えない力の一つだと感じました。

“銀座ママ”から学んだ「富裕層の世界」

富裕層の顧客開拓に悩んだ田中さんは、社内やこれまでの人脈だけでは状況を打開できないと考え、いままでまったく関わりのなかった業界に飛び込みます。

「富裕層相手のビジネスをまず知らないと前に進めないなと思い、富裕層を相手にビジネスしている人はどんな人がいるだろうと考え、ふと銀座の高級クラブのママが思い浮かびました。お店を調べてママ宛てに『富裕層の世界を知りたいので、1週間でいいのでカバン持ちをやらせてほしい』と手紙を書いて送ったんです」

銀座
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銀座のママの下でカバン持ちを経験した田中さんは、お金を稼いでいる人の世界を目の当たりにします。自分なりに成功者たちの特徴を分析したところ、泥水をすすりながら成り上がっていった人か、学歴がある人かどちらかだと考えました。

さらなる成功を掴むために、田中さんはずっと苦手だった勉強と向き合い、大学院進学を決意します。

「ちょうどその頃、子どもが高校受験を迎えていたこともあって、自分の姿勢を背中で見せようと思いました。いままで勉強は苦手だったけど、大学院は努力して入って出たんだよというのを子どもに見せようと思って、40歳から大学院の受験にチャレンジしました」