「市場価値ゼロ」の恐怖から再転職

緊張感のある現場でも結果を出していった田中さん。自分の強みについて「現場を回す力は上司や先輩にも負けない自信があった」と語ります。学歴では測れない彼女の強みは、交渉力を含めた対人関係スキルの高さと、行動までの圧倒的な速度、そして「うまくいくまでやる」という継続力にあると感じました。

横浜市役所で、人が嫌がる仕事でも果敢にやりがいを見出し、成果を出していた田中さん。しかし、仕事はできたものの、もっと上を目指したいと思ったこと、昇任試験に合格できなかったことから転職を考えます。

最初の大学受験や編入学試験でも思うような結果がでなかったことを考えると、ペーパーテストがあまり得意ではなかったことが伝わってきます。

そんな状況で転職をしようとしたものの、「30代後半で、公務員10年と民間4〜5年勤務のキャリアだとほぼ市場価値がゼロだった」と当時を振り返ります。ですが、田中さんは知り合いの伝手もあって外資系生命保険大手、ジブラルタ生命保険への内定をもぎとりました。

仕事のために面接をする女性
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです

「野球部のマネージャー時代の経験が生きた」

応募者7000人の中から、見事に志望企業への内定を獲得した田中さん。ジブラルタ生命保険では、年収が前職の倍の1000万円以上になったと言います。

筆者が9年間かけて学歴を手に入れようとしていた間に、田中さんは現場で実績を積み重ねていました。筆者と同じように、田中さんにもご自身の学歴に対するコンプレックスがあったはずです。

ですが、優先順位を付けて今の生活をより良いものにするために、今やるべきことをやっていた姿勢が、私が持ちえない、現実を見据えて合理的な判断ができる田中さんの能力なのでしょう。

ジブラルタ生命保険では、セールスマンのトレーニングを行う管理職として採用されたそうですが、未経験の業界出身ということもあってか周囲の信用を得るのに苦労したそうです。

「最初はトレーニングのクオリティを高める努力をしましたが、途中で参加者との信頼関係がなければ積極的に話を聞いてくれないのでは、と考えるようになりました。そこで、週2回行っていたミーティングの際に、会場の椅子並べを自分ひとりでやることにしました。

子育ての関係で朝早くから会場に行けなかったので、前日の夜遅くまで残ってひとりでひたすら100以上の椅子を毎回並べていましたね。野球部のマネージャー時代に選手たちの活躍を支えるための準備を学んだので、その経験が生きたんだと思います」