滅多に起きないことを報道し怖がらせるTV

たとえば、「高齢ドライバーの運転はあぶない」とテレビ局が報じれば、それを鵜呑みにしてしまいます。たしかに、「高齢ドライバーが高速道路を逆走」「エンジンとブレーキを踏み間違えて暴走し、死者○名の事故を起こした」といったニュースが、しばしば世間を騒がせました。

ところがデータを調べてみると、それも単なる「印象」であることがわかるのです。

内閣府による「令和2年交通安全白書」のなかの「運転者が第1当事者となる交通死亡事故発生件数(令和元年)」を年齢層別に見てみると、免許保有者10万人当たりの死亡事故は、20~29歳が3.8件、40~49歳が2.8件に対し、80歳以上は9.8件となっています。

この数字だけを見ると、高齢者の運転は危ないように見えます。

しかし法務省の「令和2年犯罪白書」のなかの「交通事故発生件数(令和元年)」を、第1当事者の年齢層別に見てみると、20~29歳が6万3749件、40 ~49歳が6万5838件に対し、75歳以上は3万459件程度。ほかの世代と比べて決して多くないことがわかります。

また、高齢者が運転者の場合、若い世代に比べて第1当事者自身が事故で亡くなることが多いため、交通安全白書では数字が高くなっているとも考えられます。

「人間が犬を噛んだ」ときにニュースになる

テレビ報道の「暴走高齢ドライバー」のようなイメージとは違って、私たちが普段、車を運転しているとき、高齢者マークをつけている車を見かけると、スピードの出しすぎどころか、「慎重すぎるほど、ゆっくり安全運転」のドライバーが多いのが実感ではないでしょうか。

和田秀樹『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春出版社)
和田秀樹『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春出版社)

つまり暴走高齢ドライバーは「とても珍しい事件」だからこそ、ニュースで報じられるし人々の注目を集めるのです。大切なのは、けっして「高齢ドライバーの事故が多いから」報じられるわけではないこと。

それなのに「高齢ドライバーの運転は危ない」と、国民が簡単に刷り込まれてしまうのが、日本という国なのです。

また日本では、ニュースによって世論が作られ、それによって政策が変わることさえ珍しくありません。

ほかの国なら、政策を変えるのは、客観的な「統計情報」に基づいた議論によってなされます。日本を含めて、ほとんどの先進国で統計調査を行うのはそのためです。

ところが日本では、「確率的にはとても珍しいことが起きた」からニュースになっているのに、なぜか、その確率的に低いことへの「世間の注目度」によって、政策が変わってしまうのです。

テレビを観るときに覚えていてほしいのは、「犬が人間を噛んだ」ではニュースになりませんが、「人間が犬を噛んだ」ときにニュースになるということです。

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