ロシアは経済合理性で動いていない
――ロシア・ウクライナ戦争も5年目に突入しました。
【池田】ロシア・ウクライナ戦争が始まった頃に、「合理的に考えればやるとは思えないのに」「対ロ経済制裁が発動して、経済合理性が損なわれれば戦争をやめるのではないか」との解説がありましたが、ロシアは西側的な損得勘定での合理性に基づいて判断を下しているわけではありません。
しかも経済制裁もロシア国民の日常生活に影響があるようなものを対象にしていないので、物不足なども発生していません。
私は経済の専門ではありませんが、ロシアには資源はあるし、自国で生産できるものがたくさんあります。ただ精密機械などは制裁対象になっているため、列車や航空機の部品などは不足しています。そうした点でじわじわと輸送力や戦力に影響が出る面はあると思いますが、今日明日でいきなり経済的に追い詰められて戦争に影響する、という話ではありません。繰り返しになりますが、そもそもロシアは経済合理性では動いていないのです。
「織田信長のようなもの」
【池田】プーチンは「究極的には力がすべてを決める」という価値観を持っていますから、ウクライナに対しても「弱いのに挑発してきたのが悪い」という発想なのでしょう。
また拙著『悪党たちのソ連帝国』で書いたように、ソ連の歴代指導者はそのキャリアを築く上で何らかの形でウクライナと縁を持つ人物が多く、つまりウクライナはそれだけソ連の中核を成していた。
したがって、ソ連時代に育ったプーチンが、ウクライナはロシアと一体不可分だと考えるのも、ある意味で当然とも言えます。プーチンから見れば、「ウクライナはもう主権を持つ独立国家なのだから、手を出してはいけない」という国際法の理念も、虚構に過ぎないという話になります。
安倍政権時代、官邸周辺の人たちが「プーチンは織田信長のようなもので、現在の我々とは違う、戦国時代のような価値観で世界を見ている」と言っていたという話がありますが、実際その通りだと思います。もちろん、周辺国と仲良くしていた方がいい局面ではそうしますが、行ける、今行くべきだと思えば全面的に力で押し出してくる。力と力のぶつかり合いも辞さないのです。

