「アメリカと対等な大国」という自負

現在、中国の政策決定層や共産党直属の研究機関の間では、驚くほど強固な楽観論が支配している。たとえば、「中国はついにアメリカと対等な大国になった」「アメリカの圧力に屈せず、逆に実利的な譲歩を引き出した」などの過剰な自己評価が国内では蔓延している。

実際、中国には、釜山会談を「米中二極体制(G2)の確定」と評価する政治学者も現れている。これは、トランプ大統領がSNSで米中首脳会談を「G2」と表現したことがきっかけだが、中国側がそれを真に受けたのは、肥大化した自尊心が目を曇らせているからだろう。

トランプ大統領は交渉相手をおおげさに持ち上げることを常としており、あくまでトランプ流交渉術の一環だ。ところが、中国はこれを真に受けて「中国の勝利」を叫んでいるのである。

まず、釜山で何が決まったのかを再検証してみよう。合意の柱は次の3点である。

1. 追加関税引き上げの停止
2. レアアース輸出制限の解除
3. 中国による米国産農産物の輸入再開

これらは、2025年に激化した経済対立によって、お互いが課した制裁である。先に仕掛けたのはアメリカであるので、たしかにそれをアメリカ側が引っ込めたというのは、中国にとっては「勝利」にも見える。

だが、これは一時的な止血にすぎず、米中対立の核心である戦略的争点に言及されていない。

米国と中国
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釜山会談は「時間稼ぎ」にすぎない

具体的には、先端半導体の対中輸出規制、AIや量子コンピュータなどの次世代技術覇権、台湾海峡の安定、そして南シナ海における力による現状変更といった問題だ。これらは「棚上げ」されたどころか、むしろ「対立」の深度を増している。

これはアメリカの「妥協」ではなく、中国包囲網を強化する時間稼ぎのために先延ばしされただけなのだが、中国側には現実が見えていないのである。

事実、アメリカは会談直後からベネズエラやイランへの介入を強化しており、中国の資源補給路を外側から遮断する「アウトサイド・イン戦略」を着々と進めている。

アメリカは、中国と正面衝突する前に、その周辺を枯渇させるフェーズに入ったと見るべきだろう。釜山会談は「終戦」でも「休戦」でもなく、アメリカにとっては次なる包囲網を完成させるための、冷徹な「一時停止」にすぎなかったのだ。