国益を損なってでも、日本を懲らしめたい

中国が現在、日本に対して仕掛けている経済的・外交的制裁には、ある種の「不合理さ」が目立つ。自国のサプライチェーンを傷つけ、自国の投資環境を悪化させてまでも、なりふり構わず日本を叩き続ける姿だ。

通常、国家間の制裁は「国益」に基づき、コストとベネフィットを緻密に計算して行われる。しかし、現在の中国の行動は、経済合理性よりも「感情的な報復」に比重が置かれている。これはまさに、ナルシシズム(自己愛)が傷つけられた際に発動する「自己愛の憤怒(Narcissistic Rage)」そのものである。

ナルシストは、自分が万能で絶対的な存在であるという幻想を抱いている。そのため、そのプライドを傷つける存在に対しては、たとえ自分自身が傷つこうが相手を徹底的に破壊しようとする傾向が強い。

高市首相の「存立危機事態」への言及や、日本の自立的な安保政策は、中国にとって単なる政策の不一致ではない。「アメリカを屈服させた自分たちに対して、格下であるはずの日本が背いた」という、耐え難い侮辱として受け取られる。

北京での抗議活動
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対日制裁の裏にある被害者意識

ここで恐ろしいのは、彼らが抱く「無限に拡大する被害者意識」である。

彼らの論理では、自分たちは常に「正しい被害者」であり、相手は「不当な加害者」でなければならない。日本が正当な防衛権を主張すればするほど、彼らは「中国の平和的な台頭を日本が阻害している」という歪んだ被害妄想を増幅させ、それを「自傷行為に近い制裁」の正当化に利用する。

この件で「中国は自分たちにダメージがあることはやらない」という意見は通らないのである。

この「被害者意識の肥大化」は、論理的な対話や妥当な譲歩では解消されない。なぜなら、彼らが求めているのは国益の調整ではなく、傷つけられた万能感を回復させるための「相手の完全な屈服」だからである。日本への過剰な制裁は、その病理的な自己愛を満たすための儀式と化している。

それでは、これほど多くの懸念材料を抱えながら、なぜ中国のエリート層は「アメリカを妥協させた」「日本は取るに足らない」とまで信じ込めるのだろうか。