「何のためにソーセージを作っているのか」

元来の探究心と好奇心に火が付いた。そこから世界各国のソーセージについて文献を漁り、その後、折りを見ては実際にヨーロッパからアジア、南米まで約15カ国赴き、現地のソーセージを食べ尽くした。

ミャンマーを訪れた村上さん
写真=本人提供
ミャンマーを訪れた村上さん

当時、ドイツ系のソーセージ屋はあれど世界のソーセージという括りでの専門店がなかったことに気づき、「これだ‼ 独立して、世界のソーセージ専門レストランをやろう」と直感に従った。

2009年、31歳のときに港区白金に「hayari」を開店させた。世界のソーセージ専門の飲食店という珍しさ、グルメ通が集まる立地の良さもあり、すぐに繁盛店になった。百貨店などから出店の話も舞い込み波に乗っていたが、7年目に立ち止まってふと考えた。

「朝から夜まで働いて、閉店してからは近くで仲間と深夜まで飲み明かして、また働くというずっとオンのままの状態でした。このまま不健康な一生を送りたいのか、何のためにソーセージを作っているのかわからなくなっていった」

都心の繁盛店を閉め、2018年に自然豊かな山梨県上野原市で店舗兼工房を構え、移住した。

JR上野原駅から徒歩1分ほどの場所にあるハヤリソーセージ
写真=本人提供
JR上野原駅から徒歩1分ほどの場所にあるハヤリソーセージ

課題を詰めるソーセージ=現代ソーセージ

「現代ソーセージ研究家」というユニークな肩書は、2019年夏に付けた。

「僕の友人が、四六時中ソーセージ作りや研究に没頭している僕の姿を見て、『ソーセージ研究家』ではちょっと言い足りない。もっと深遠な思いが伝わるように、“現代”と付け加えたら良いのではないか? と提案してくれたんです。最初は冗談だと思って笑っていましたが、よくよく考えるとその肩書は、僕がやりたいエシカルなソーセージ作りを言い表していました」

約5000年前に誕生したとされるソーセージは、越冬するための保存食であり、切り落としや筋などの部位を余すことなく利用するために編み出された食べ物。ソーセージの歴史や食文化に精通していた村上シェフにとって、フードロスという現代の課題解決の道具としてソーセージを活用するのは、理に適っていた。

「日本ではキズやサイズ不良の野菜や果物は、味が良くても売らずに廃棄されてしまうことが多い。そういう未利用の食材を使っておいしいソーセージを作れば、フードロスの課題解決の一助になるのではと思ったんです」