「腸に詰めた筒状」であれば自由な料理
たしかに日本人にとって、朝食やお弁当でおなじみなのは小ぶりのウインナーだ。そんな「ウインナー一辺倒」の世界に新風を吹き込むべく、村上シェフは約16年前からソーセージ開拓に取り組んでいる。工房で始めた世界のソーセージ作りはその一つだ。
店内のショーケースには、フレッシュハーブ(ローズマリー、セージ)の上品な芳香のするイタリアの焼きソーセージ「サルシッチャ」、レモングラスや青唐辛子を使ったレッドカレーのフレーバーが印象的なタイ北部チェンマイの伝統ソーセージ「サイウア」など、15種の定番と季節の商品が並ぶ。
世界各国で食べた現地のソーセージと文献をヒントに、34カ国のソーセージを再現し、日本にないソーセージを紹介している。創作数は、創業以来約16年で300種類を超えた。
「世界には、豚や羊、牛の腸や胃、膀胱といった袋に、豚だけでなく鶏や牛、羊のひき肉、米やパン、チーズなど、その土地の食材を詰めた多種多様なソーセージがあります。本来、ソーセージは腸などの袋に食材を詰め、保存性を高めた筒状の料理で、メインディッシュやスナックとして食べられている。僕が目指すソーセージはそういう『腸に詰めた筒状』の自由な料理なんです」
無添加ソーセージ作りは難易度が高い
ハヤリソーセージは、加工肉で常用される化学調味料(アミノ酸等)や結着材、発色剤などを一切加えない、いわゆる無添加が基本だ。「無添加製法にするにはかなりの技術がいる」と、村上シェフは話す。
「食感の良いソーセージ作りのもっとも大切な要素は、肉の粘り気です。粘り気を引き出すために結着剤を入れると、素材の風味や息吹が消えてしまい、無機質な味気のない食べ物になってしまう。それを避けるために、難しいといわれている結着剤無添加製法の開発に挑戦したのです」
肉を寝かせる方法、肉の挽き方、練り方、腸詰の仕方、塩の分量、スパイスと香草の配分、肉以外の食材とのバランスの調整など、一つ一つの手順を何度も精査した。試作と試食を重ね、試行錯誤の末にハヤリソーセージのおいしさを表現する独自の製造方法にたどり着いた。あくまでもおいしさにこだわった結果、無添加になったのだ。


