「身体になじむ」味わいを目指す
原料となる肉にもこだわった。地元山梨県の目利きの肉屋が厳選した、最上級の三元豚を使用している。ソーセージに使用されることが多い冷凍肉と異なり、生肉はたんぱく質の冷凍変性がないので、粘り気が得やすい。
「無添加を前面に出して強調したいわけではないんです。ただ、化学調味料を使うと、不自然なうま味だけが突出してしまって、全体の味のバランスが崩れてしまう。発色剤もボツリヌス菌を抑制する働きがあるので有効な手段だと思いますが、自然素材の色味を活かすために入れていません。こういう添加物を入れると、身体になじむような味がしない。僕は身体になじんで、身体が喜ぶような滋味あふれるソーセージを作りたいんです」
ハヤリソーセージの商品は1本100g前後で600~1800円。大手市販ブランドのウインナーが1袋6本入り(約115g)で約200円であることと比べると、3~10倍の価格である。
しかし、値段の問題ではなく、質をなにより重視する。中身は肉や自然素材がぎっしり詰まっていて、味わいのない増量成分も入れない。家飲みの至高のおつまみ、特別な日のメイン料理として価値ある一品になる。プレゼント用の需要も高いという。
「日本ではどうしても大手メーカーの価格がソーセージの価値になっている。良質な肉とスパイスで作ったらその価格にはならないだろうと思うものもあります。そういう商品の原材料を見て、何か懸念点があるかどうかを確認してほしいんです。華美なパッケージの雰囲気に流されて受け身で買わないでほしいというのが、僕が切実に伝えたいことです」
フランス料理の一皿で人生が変わった
ソーセージにここまで魅せられるとは、村上シェフ自身思ってもみなかった。きっかけは、20代のときに食べたフランス料理の一皿だった。全身に稲妻が走るような衝撃を受けた。
「約20年前、東京・恵比寿の豚肉専門料理店で働いていたのですが、その当時はソーセージというと、ケチャップとマスタードを添えて出すというイメージを持っていました。ところが、店の常連だったフランス料理のシェフが僕のために作ってくれたソーセージは、まったく別次元の物でした。
仔羊の骨(出汁)から抽出した濃厚なソースのかかった羊肉のソーセージは、フレッシュな野性味と深い味わいがありました。口の中でソースの酸味と肉の脂が溶け合い、うま味が舌全体に広がってうなるようなおいしさでした。世界には料理として完成されているソーセージがあることを初めて知りました」
