低金利時代の住宅ローンの落とし穴

繰り返しになりますが、日本では大規模緩和策がうまく機能せず、物価だけが上がり、経済は停滞したままで、賃金も上がらない状況が続いています。ここで金融を正常化しようと金利を上げてしまうと、様々な悪影響が各方面に及ぶことになります。

もっとも影響が大きいのはやはり住宅ローンでしょう。

日本では住宅ローン商品のほとんどが変動金利で提供されており、このタイプのローンを組んだ人は、金利が上昇すると、毎月の返済額もそれに合わせて増えていくことになります。

景気が拡大している状態であれば、賃金も上がっていきますから、金利が上がって毎月の返済額が増えても、家計にとってそれほど大きなダメージにはなりません。

しかし、不景気が続き、賃金が上がらない中で金利が上昇してしまうと、住宅ローンの返済額が増えた分のお金を捻出することができなくなってしまいます。

家計に余裕のある状態でローンを組んでいればそれほど大きな問題にはなりませんが、ギリギリの状態でローンを組んでいた人であれば、最悪の場合、返済が滞るケースが出てくるでしょう。

倒れた貯金箱と散らばった硬貨、背景に家の模型
写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan
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住宅を手放しても、さらに借金に追われる

住宅ローンの利用者が借りたお金を返済できなくなった場合、物件を売却することになりますが、日本の場合、ここに大きな落とし穴があります。日本の住宅ローンのほとんどは、売却価格が下落しローン残高を下回った場合には、残額についても引き続き、返済を求められます。

つまりローンの返済ができなくなって住宅を手放しても、さらに借金に追われることになるのです。

一方、米国の住宅ローンは、仮に返済ができなくなった場合、不動産を銀行に渡せば、それですべての借金はチャラになります。

米国では消費者保護が徹底しているので、こうした措置が取られていますが、日本の住宅ローンは残額を払い切るまで返済義務が続くという厳しいものになっています。こうした理由から金利上昇の影響は甚大にならざるを得ません。

当然のことながらローン返済に苦しむ人が増えれば、消費も停滞しますから景気にも悪影響及ぶでしょう。こうした事態が想定されることから、一部から金利の引き上げは行うべきではないという意見が出ているわけです。

同じことは企業にも当てはまります。

これまではゼロ金利に近い状態でしたから、企業はコストがほぼゼロでいくらでも資金を借りることができました。しかし金利が上昇すると、借り入れに対して相応の利子を支払う必要が出てきますから、企業にとっては利益を圧迫する結果となってしまいます。借り入れが過大な企業の場合、最悪、倒産というケースも出てくることでしょう。